このコラムで以前紹介した米Appleの「iPhone」の欧州展開。Appleは9月中旬、英国とドイツで正式に発表、オペレータも憶測通りで、欧州市場征服に向けて順調に計画を進めているかに見えた。だが、フランスで行き詰っている。このまま行けば年末商戦に間に合わないかも、と見る向きも出てきた。
フランスでのパートナーは、8月からうわさされているようにおそらくOrangeで間違いないだろう。OrangeのCEO、Didier Lombard氏も契約を認めている。だが、AppleとOrangeはどうも良好な関係ではないらしい。英国とドイツの各パートナーがiPhone提供を発表して2週間以上が経過した現在も、フランスでの展開について2社ともに口を閉ざしている。
Appleはまず、9月18日に英ロンドンで英O2と発表を行った。CEOのSteve Jobs氏はこのとき、オペレータ選びを結婚に例え、「数々のデートを行った結果」と述べた。「怒っているガールフレンドもいる」と冗談も飛ばしている。Jobs氏はその後、ドイツ・ベルリンに飛び、独T-Mobileと婚約発表した。
その翌週にはフランス・パリで「Apple Expo」が開催されることから、メディアはJobs氏はそのままフランスに向かい、Expoに合わせてOrangeとの“結婚”を発表すると予想した。ところが、開幕前日も会期中もなにもなし。ExpoにiPhoneの姿はなく、Apple側も「正式に発表していないものを展示できない」と強固な姿勢。報道関係者だけでなく、来場者もみんなiPhoneがないことに当惑しながら、5日間のイベントは終わった。
Appleのフランス人ガールフレンドは、気難しいのだろうか?わからなくもないが、2人が結婚できない理由は感情の問題ではなさそうだ。
結婚によくある話だと思うが、2人の障害になっているのは法律とお金のよう。まずは規制から。フランスでは、商品にサービスを付けて販売することは原則として禁止されている。オペレータは、契約付きの携帯電話を安価で販売すると同時に、同じ端末を単体(契約なし)でも販売しなければならない。iPhoneには販売助成金がないため、OrangeがiPhoneを販売する場合、契約付きのiPhoneと契約なしのiPhoneを同じ価格で販売することになる。AppleはiPhoneが生む収益を自分たちのポケットに入る仕組みを作ろうとしているので、契約なしのiPhone販売を良しとしない。これがお金の問題につながり、iPhoneの収益を分けようとするAppleとOrangeはその比率でもめている、そういうことのようだ。また、iPhoneにOrangeのロゴを入れるかどうかでも、2社の意見は食い違っているという。
デートを重ねた後でお互いに結婚の意志があることは確認したが、結婚後の生活についてもめているから正式に婚約発表できない、といったところだろうか。
France Telecom傘下のOrangeに限らず、フランスとAppleとの関係は、以前の蜜月状態から変わりつつある。過去には、「iPod」と「iTunes Music Store」の結びつきを禁じようという動きもあった。ネットワークを限定しようとするiPhoneでも、政府が介入するかもしれない。AppleとOrangeのラブストーリー、フランス映画のように複雑にならないとよいが。
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