「厳選」「成果報酬」で第3勢力目指すECホールディングス

 EC運営支援を主軸に、ECおよび株式公開のコンサルティングも手がけるECホールディングス。特に注目されるのは、完全成果報酬型のビジネスモデルを採用し、単にECインキュベーションやソリューションサービスを提供するのではなく、パートナーと共にビジネスを創り上げることで成果を上げている点だ。同社の代表取締役社長である井関貴博氏に、そのビジネスモデルや起業理由などについて聞いた。

--ECホールディングス設立以前、どのような業務に携わっていましたか。

 1999年大学を卒業後、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズでIT関連のハンズオン型ベンチャー投資に携わり、2004年7月にインターネットソリューションのネットエイジへ転職しました。同社は、主にインターネットの最先端企業をインキュベーションする会社ですが、私自身は食品製造業など、地に足を着けて、地道にものづくりを続けているメーカーを担当する機会が多かったですね。そうした企業、特に老舗は現状に安住していて、えてしてeマーケティングが不得手でした。

--いい商材は揃っているのに、伸び悩んでいる会社が多いと。

 そう。基本的にECは、メーカー主導でやるのが一番強いはずですが、かといって社内にネットの専門家を抱える余裕もありません。ただ、そうした状況を打破したいという意識は決して低くない。私自身も担当の企業から「インターネットをもっと活用したい」という相談を数多く受けました。

 そうした企業を応援したい気持ちが強まっていくと同時に、いいものを作っている会社であれば、インターネットのノウハウを与えるだけで絶対に伸びる、と確信するようになったんです。ただ、ネットエイジの社員という立場では、やれることに限界があったので、私も関わっていた同社の株式公開の目処が立った2006年に、起業を決めました。

--メーカーのECに対するニーズの高まり、という点以外に、起業の動機となったことは。

 Eストアーの石村賢一社長と知り合い、協力を得られたことが大きいですね。現在、同社とは資本業務提携をしています。それからミクシィを担当して「伸びる会社とはこういうものだ」と実感する場面にたびたび遭遇したことも一因です。忙しい会社なのに、社員は仕事を楽しんでいて、かつ目標に向かって一丸となっている。こういう会社を作りたい、と強く思いましたね。そのほかにも、インターネット広告やシステム開発には優秀な人材が集まって、競争も激化しているのに対し、EC分野は比較的競合が少ない、というのも理由の一つでした。

--とはいっても、楽天やアマゾンなど、強大なモールやECサイトは存在します。どのように独自性を発揮しようと考えたのですか。

 メーカーや川上に位置する流通会社は、客と直接つながって意見を吸い上げ、それらをデータベース化して活用したいと常に考えています。だから既存のモールやECサイトは、どのような企業にも門戸が開かれている反面、そうしたアクションにも課金しています。

 一方で弊社は、主に利益率の高い高級商材を扱う会社と客とを制約なく直接つなげ、将来的にはどちらかといえば厳選型のモールを目指したいと思っています。

--具体的には、どのようなビジネスモデルを採用していますか。

 事業の第一の柱はeコマースの支援とインキュベーションで、弊社の売上の約半分を占めています。EC・株式公開のコンサルティング事業が全体の2割程度です。ただ、通常のインターネット企業のように、HPリニューアルやリスティング広告でいくら、という形で、単純に提供したものの対価を取るのではなく、売上と連動する形で報酬の決まる、完全成果報酬型のビジネスモデルを採っています。

 クライアントのパートナーとなって、インターネット部門を弊社が担当し、そこから出た利益の15〜45%を頂戴する、という方式です。

--そのビジネスモデルのメリットは。

 初期投資は全て弊社の持ち出しですから、費用対効果をあまり気にせずに、パートナー契約を結んで頂くことができる点と、投資を回収するために弊社としても一所懸命売上を伸ばす努力をしなければならない点ですね。もちろん、先に料金をもらいたい、という気持ちはありますよ。それこそ、喉から手が出るほど(笑)。でも、それだとどうしてもパートナーと協力して、いいものを作り上げなくては、という意識が薄らいでしまうし、いい結果を残せませんからね。

--アパレルや食品など、現状あまりECに強くない分野でも、ブランドを確立している会社であれば、確実に伸ばすことができるとお考えです。その成功率は。

 大ヒットもあれば、ポテンヒットもありますが、まず100%右肩上がりの結果を出せています。というのも、中堅企業でさえ、本来打つべき施策、例えばHPリニューアルや顧客メールアドレスの活用、検索エンジン最適化などを行っていないところがほとんどですから。もちろん、うちの採算ベースに乗るかどうかはまた別問題ですが、月の売上が6万円から300万円に伸びたところもあります。

--EC業界と御社の今後について、どのような見通しを持っていますか。

 インターネットによって、メーカーが小売店に依存せず、より安価に直接販売できる仕組みが整いつつありますが、海外展開も含め、ECにはまだまだ未開拓な部分がたくさんあります。お客様の気持ちになって、細やかなサービスを提供し続けるためにも、顧客数を増やすことより、現在のパートナーとより深く関わることが大事だと考えています。

 来年中を目処に、株式公開も考えているので、収益の基盤をさらに固めていく方針です。

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