成功事例に学ぶ、産学官連携の成功の秘訣

 東京・東京国際フォーラムで開催された、独立行政法人科学技術振興機構(JST)、および独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催するイノベーションの産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2007-大学見本市」において、「産学官連携サクセスストーリー〜産学連携成功のつぼ〜」と題した講演会が9月14日に行われた。

 講演会には、2007年度産学官連携功労者として表彰された研究開発事例に携わる4組の研究者が出席し、研究開発の内容や産学連携のプロセス、成功に至った要因が紹介された。

 まずはじめに東京大学教授の中野義昭氏が登壇。内閣総理大臣賞を受賞した、次世代の省電力高速ネットワークに欠かせない、超高速・大容量電子制御型波長多重光スイッチノードデバイスの開発と、開発デバイスを核にした光ネットワークノードプロトタイプの構築とシステム実証の概要を紹介した。

 今回の官学連携プロジェクトが成功した要因について「大学がシステムインテグレーターとしての役割を担い、どの会社も“大学のためなら骨を折る”という意識だった。それによって求心力が維持され、産業界のトッププレーヤーの力を結集したような成果が得られた。また、官による適切な研究開発マネージメントが行われ、ネットワーク型の研究組織形態を取ったことによりオーバーヘッドが小さくなった。これにより、効率的かつ柔軟な研究開発を行うことができた」と、産学官の役割分担と緊密な連携が鍵だったとした。

富士通経営戦略室CVC担当部長の中村裕一郎氏 富士通経営戦略室CVC担当部長の中村裕一郎氏

 続いて講演を行ったのは、富士通経営戦略室CVC担当部長の中村裕一郎氏。富士通と東京大学ナノエレクトロニクス連携研究センターが共同で設立した、高性能量子ドット光デバイスの開発・製造・販売を行うベンチャー企業「QDL」は内閣総理大臣賞を受賞している。

 中村氏は産学連携の成功要因として「産業化出口イメージの共有」「役割分担の明確化」「国家プロジェクトとの連携」「リスクマネーの活用」の4点を挙げる。まず基礎研究段階で産学連携にふさわしいテーマを選んだ結果、「国家プロジェクトとして産学だけでは手の届きにくいプロジェクトに取り組むことができた」(中村氏)という。加えて「ベンチャーキャピタルによるリスクマネーが重要な役割を果たした。研究開発の事業化は、(技術先行型の)テクノロジープッシュ型だと死の谷に陥りやすいが、(市場ニーズに応える)オンデマンドプル型で産業化の出口を産学で共有できたのが大きい」と語った。

 さらに、TOTO総合研究所、および富士通テクノロジーセンターと共同で研究開発を行った「ナノレベル電子セラミックス低温成形・集積化技術」で科学技術政策担当大臣賞を受賞し、代表で講演を行った、産業技術総合研究所・先進製造プロセス研究部門・集積加工研究グループ・グループ長の明渡純氏は「まず最初にニーズを掘り起こし、産学連携で緊密な共同開発を行った。そこで出口が見えて、どういう基礎研究を行えばよいかが把握できたのが大きい。どこからスタートしてもいいけれど、それをどう広げて新しい応用先を見いだすかが重要だ」と、メーカーとの連携により、開発技術の具体的な応用事例をゴール地点としてあらかじめ定めた上で、研究開発を展開できたことを今回成功に至ったポイントとして挙げた。

筑波大学教授の山海嘉之氏 筑波大学教授の山海嘉之氏(右)と全身装着型ロボットスーツ“HAL”(左)

 また、人間の機能を拡張・増幅・補助することを主な目的として、世界で初めて全身装着型ロボットスーツ“HAL”を開発し、経済産業大臣賞を受賞した、筑波大学教授の山海嘉之氏は「産業化と国際展開の推進。また、基礎研究と実利用のスパイラルを継続してつくることも重要」だと、自らの産学連携イノベーション戦略について語った。

 次世代の高性能低温薄膜堆積法である“Cat-CVD(触媒化学気相成長)法”を開発し、装置メーカーとの共同研究により、用途別のCat-CVD装置の商品化に成功し、日本経済団体連合会会長賞を受賞した、北陸先端科学技術大学院大学教授の松村英樹氏は「2000年から開催しているCat-CVD国際会議で、国際的な研究者ネットワーク形成を行える体制を整えた。そこで論文発表の場をつくり、人材育成にも役立ち、各地域の企業の人にもCat-CVD技術の議論に参加できる場を設けた。この技術を産業分野の人たちに理解してもらうことで、単独では想像できなかった新しい応用分野への適応の可能性を見出すことができた」と、技術を商品化へ導いた秘策を披露した。

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