タイ政府はこのほど、動画投稿サービス「YouTube」への約5カ月間にわたるアクセス禁止措置を解除した。軍部主導のタイ政府は、Bhumibol Adulyadej国王を侮辱するビデオクリップが投稿されていたことを理由に、国内のネットユーザーによるYouTubeへのアクセスを遮断していた。
だが、この決定には当然、条件が付く。
米国時間8月31日に掲載された経済紙「Financial Times」のインタビュー記事で、タイの情報技術相は、Google傘下のYouTubeが、タイ政府が違法と判断したビデオクリップの遮断に同意したことを受け、アクセスを復旧したと説明した。タイの法律では、王族を侮辱する行為が禁じられており、違反すると最高で15年の禁固刑に処せられる。
人権擁護団体のHuman Rights Watchによると、タイ政府は、24時間無休でインターネットのコンテンツを監視するとともに、各インターネットサービスプロバイダに対して、反体制的な政治メッセージを掲載するサイトのブラックリストを作成するよう指示しているという。
今回の状況は、言論の自由が厳しく規制されている国で、米国のインターネット企業が事業を展開する時に不可欠なバランスの取り方を示す、新たな例となっている。米国企業のビジネス判断は抑圧的政権の命令との対立を避けられないと考える人は、繰り返し批難の声を上げてきた。たとえばYahooは、2人の中国人ジャーナリストと法廷闘争の最中だ。ジャーナリストらは、オンラインで公開した政治文書についての情報を、そうした表現の抑制に力を入れている中国政府に「自発的に」引き渡したとして、Yahooを提訴した。
一部の大手企業は、道義的判断を民間企業に委ねるのでなく、米国政府が力を貸すべきだと主張してきた。一方Googleは、検閲行為を貿易障壁ととらえ、自由貿易協定に反検閲の誓約を盛り込むことを提案してきた。
(太平洋夏時間8月31日午前11時30分更新)筆者の問い合わせに対し、YouTubeの関係者から次のような声明が送られてきた。「タイでのYouTubeへのアクセスが元通りになったという知らせを歓迎する。われわれは、タイの情報技術相と建設的な対話ができたことに感謝している。YouTubeは、われわれのコンテンツポリシーに違反する動画を責任を持って削除し、タイの政府当局と密接な協力関係を今後も維持していく」
(太平洋夏時間8月31日午後11時50分更新)YouTubeに対して、タイ政府の要望にどのように応じていくつもりか、という質問も行った。つまり、政府が違法と指摘したコンテンツを即刻削除するのか、あるいは削除までの過程にYouTube独自の分析を差し挟むのか、という質問だ。YouTubeの関係者は、こう答えるにとどまった。「われわれは常に、同様の問題に関して、世界各国の政府と建設的な話し合いをする用意ができている。われわれには、関係する双方が関連法や文化的側面を尊重しつつ、われわれのグローバルコンテンツポリシーとも一貫性を保つ形で、こうした問題の解決に取り組んでいく」
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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