1999年2月、NTTドコモのiモードがサービスを開始し、その後3〜4年の間に携帯電話が一気に普及したことで、モバイルコンテンツの市場が大きく膨らんだ。2003年がモバイルコマース元年といわれているほか、さまざまなビジネスモデルが登場し、現在に至っている。携帯電話はPCに比べると、総務省や携帯電話キャリアなど多くの人が関わり、サービスの構造が複雑だ。その中でベンチャーの経営者は、モバイル業界の未来をどう考えているのだろうか。
モバイル業界のキーパーソンが一堂に会したイベント「モバイル・ビジネス・サミット 2007」では、「モバイル起業家が考える業界理想像」をテーマにパネルディスカッションを行った。登壇したのは、エフルートの代表取締役社長である佐藤崇氏、jig.jpの代表取締役社長CEOである福野泰介氏、ロケーションバリューの代表取締役である砂川大氏の3名。モデレーターは、ゆめみの代表取締役社長である深田浩嗣氏が務めた。
携帯電話が電波を使った事業である以上、モバイル業界は国の許認可や、法制度の影響を避けることは難しい。また、2007年6月に報告書案が発表された総務省の研究会であるモバイルビジネス研究会で議論された、キャリアが携帯端末の販売店に報奨金を支払う販売奨励金制度の見直しは、携帯電話向けのサービスを提供する側に大きな影響を与える。モデレーターの深田氏は、ディスカッションの冒頭で、この見直しがどのように働き、はたして吉になるか凶になるかという挑戦的なテーマを各パネラーに投げかけた。
検索エンジンを中心とした携帯電話向けの情報サービスを提供するエフルートの佐藤氏は、定額制やフルブラウザの導入など、これまでも業界が大きく変わる局面はあり、それに対応してやっていくことが起業家だと答えた。
「起業家は挑戦者です。販売奨励金制度の見直しが、もし凶と出ても、凶なりの戦略を立てるものです。それにより、モバイル業界が変わって欲しいという期待を持っています」(佐藤氏)
携帯電話でPCのサイトを閲覧できるフルブラウザを提供するjig.jpの福野氏は、新しい携帯端末が普及しなくなるのは、モバイル業界にとって痛手だと述べながらも、一方で、新機種を買う価値があるのかと振り返ったとき、必ずしもそうではないという。
「性能がそれほど変わらないのなら、古めの機種でも出回るのは良いと思います。それは販売するキャリア次第でしょう。キャリアの課金システムに関しては、開放されるのは願ったり叶ったりです。しかし、キャリアの事情によって開放できなければ、それ以外の方法でがんばるだけです」(福野氏)
携帯電話のサイト上の地図に位置情報を表示して短時間の求人・求職情報を提供するサービスを運営するロケーションバリューの砂川氏は、「モバイルビジネスが進化したのは、根源に販売奨励金があったからこそ。端末の買い換えサイクルが早いというのがあったため」と述べながらも、モバイルビジネス研究会の報告書案がいったい日本の中で何を競争力として培おうとしているのかわからないと答えた。
また「携帯端末では、ハードウェアで世界的な競争力を付けることを戦略とするのは違っています。ミドルウェアのアプリケーションを世界的標準になるように進化させること。それが日本の国益に繋がり、ユーザーにとっても良いことではないでしょうか」とも述べている。
携帯電話はネットワークビジネスであり、ナチュラルモノポリー(自然独占)という概念もあって、多様性を求めることがユーザーの利便性につながるとは限らない。実際には、インフラとして標準化された高機能な端末が普及することで、ユーザーの利便性は上がっていく。GPSも、ユーザーがどう使っていいかわからないため、まだあまり使われていないが、携帯端末の利便性を向上させる可能性は高い。ベンチャーにゆだねて、世界に発信するアプリケーションをつくる土壌を作ってほしいというのが砂川氏の見解だ。
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