「誰かが言わないとモバイル業界は変わらない」--モバ研報告書の真意 - (page 3)

永井美智子(編集部)2007年07月11日 18時25分

――総務省では今回の報告書を受けて「モバイルビジネス活性化プラン評価委員会」を設置する予定ですね。

 研究会の報告書は9月にまとまる予定です。その後、総務省がモバイルビジネス活性化プランを作成し、同時に評価委員会を作ります。評価委員会は部外の有識者の人に集まっていただき、活性化プランがどの程度実現しているのか、もしくはしていないのか、プランの見直しは必要かといった点について議論をしてもらいます。年に1回はプログレスレポート(進ちょく報告書)を提出してもらうなど、いろいろな形でプランの実現を促していきます。

 我々がやりたいのは、なるべく(期限などを)決めていくということ。それから、過程を透明にしておくこと。これがすごく大事だと思っています。

――報告書のロードマップは2011年までとなっていますね。これはなぜでしょうか。

 日本電信電話(NTT)は2010年までに、3000万世帯に光アクセスを提供するという目標を掲げています。また、総務省は2010年度までにブロードバンドが使えない地域をゼロにすることを掲げている。また、地上アナログ放送は2011年に停波します。つまり、2011年はすべての伝送がデジタル化する「デジタル元年」になります。

 また、3.9Gが実際に普及し始めるのが2010〜2011年の頃ではないでしょうか。モバイルWiMAXは2010年ごろになればかなり普及してきている可能性があります。

――いまの携帯電話とモバイルWiMAXはどのように共存していくのでしょうか。

谷脇氏 谷脇氏は7月10日付けで料金サービス課から事業政策課に異動した。モバイル業界の変革はこれからだ

 やってみないとわかりません。ただ、モバイルWiMAXは高速データ通信が中心で、チップが小さいのでPCの中に実装されていく形になると思います。こうなれば、いままでとは全く異なるニーズが生まれてくる可能性があります。音声というより、IPベースの高速データ通信サービスが中心になるでしょう。だからこそ、事業者にはMVNOに無線設備を貸し出すことを義務付けます。これは免許方針を出す上で初めてのことです。

――端末認証についても整備していくと書かれていましたね。

 メーカーからも、どうするんだという話を頂いていました。モバイルWiMAXは免許制なので、無線LANとは違います。基本的には包括免許でいいとしたうえで、2007年中に結論を出すことにしました。技術適合の確認を取れば、あとはPCの中にモバイルWiMAXチップが入っていて、それを最初に認証したときに端末を認識する形でいいと思っています。

 今回の報告書はほとんど期限を決めています。フェムトセル(ユーザーが屋内に設置できる小型基地局)の取り扱いも2007年度内に結論を出します。規制や法律での取り扱いが混乱していたら前に進みません。とにかく前のめりで決めていくというのがいまの姿勢です。市場の流れを止めないということですね。我々も必死でやります。

 ネットワークがPSTNからIPに移るとなると、すべてのパラダイムが変わるはずなんです。どこか1つをいじろうとすると、全部が変わるはずです。ですから、全部一度にやらざるを得ません。

――これまでは通信会社が業界をリードしてきましたが、今後の競争はアプリケーションやミドルウェアに移っていくのでしょうか。

 コンテンツ、アプリが牽引していくというのが一番いいのではないでしょうか。

――しかし通信会社は設備投資が膨大にかかるわけですよね。

 ネットワークや設備を持っている企業の経営が傾いたら意味がないわけで、赤字になってまでネットワークを作れとは言えません。ネットワークの適正な対価とは何か、という点はきちんと議論しないといけないと思います。

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