開発者にとってAIRのメリットはウェブ標準の技術だけで開発できる点だ。ウェブの技術がそのまま利用できるため、ウェブベースの開発者が簡単にデスクトップアプリケーションを作れるようになる。
AIRで使われている技術はHTML、Flash、PDFなど基本的なものばかり。だからこそ開発生産性が高く、ウェブのスピード感をデスクトップアプリケーションの開発にも活かすことができる。
開発フローは、基本的にはSWFやHTML、JavaScript、JEPGなど通常のウェブサイトを構成する要素だけだ。それらを実際に流通させるインストーラファイル「.air」にパッケージ化する。試しにAIRアプリケーションのインストーラファイルの拡張子を「.air」から「.zip」に変えると、その中身を見ることができる。SWFファイルやアイコンなどが階層化されているが、これもウェブ開発者からすると非常になじみやすい。
ウェブアプリケーションは、“永遠のベータ版”といった具合にユーザーのフィードバックを得ながらサービスの精度を向上させられるが、AIRはそのような開発手法をデスクトップアプリケーションにも持ち込む。
例えばアプリケーションのバージョンアップもウェブアプリケーションと同じ感覚で行える。AIRアプリケーションはウェブの標準ファイルを組み合わせて動かしているため、画像の更新やロジックの追加などが簡単にできる。これもウェブ出身の技術であることのメリットだ。
Diggの創業者であるKevin Rose氏が6月に立ち上げた新サービス「Pownce」もAIRで構築されたデスクトップアプリケーションを配布している。
PownceはTwitterライクなコミュニケーションサービス。テキストメッセージやリンク、ファイル、イベント情報などを個別の友人や友人全体、その他のユーザーに手軽に送ることができる。
ウェブサイト以外にデスクトップアプリケーションからもメッセージの投稿や閲覧が可能だ。
AIRを構成するコンポーネントは、HTML、PDF、SWFの3つ。ルートのアプリケーションを指定し、それがHTMLであればウェブサイトがそのままアプリケーションとして動くイメージ。ルートのアプリケーションがSWFなら、その中に埋め込まれているHTMLやPDFを含めたFlashのアプリケーションが動く。
重要なのは前者のようにFlashが組み込まれてなくてもアプリケーションが動くということだ。Flashに関わったことのない開発者でもアプリケーションを作成できるし、ウェブキットがはじめから含まれているため、Ajaxのフレームワークとの相性もいい。
AIRのインストーラーはWindows版が9MBと比較的ファイルサイズが小さい。アプリケーションが稼動するプラットフォームとしての普及を目指すにあたり、ランタイムのサイズも配慮されている。
ただ、ユーザーにランタイムをはじめにインストールしてもらえなければ、AIRは開発のプラットフォームとして魅力に乏しいものになってしまう。そのため、ランタイムとアプリケーションファイルをセットにして、OSごとの別パッケージにした配布形態も用意されている。
AIRの正式版は秋の終わりから冬のはじめくらいにリリースされるという。ランタイムは英語のままだが、日本語のアプリケーションも作成でき、動作する。日本語のインストーラなどを含め完全にローカライズされるのは正式版以降になる。
今後は携帯電話版のAIRもリリースされる予定だ。AIRのコンポーネントであるFlashプレイヤー、Adobe Reader、HTML実行エンジンは、3つともすでに携帯電話への移植実績がある。携帯電話版が登場するのもそれほど遠くないだろう。
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