テクノロジー系ベンチャー企業の経営者やベンチャーキャピタリストなどが集うイベント「New Industry Leaders Summit 2007 Spring」。その2日目、5月25日の講演では、オープンソースのブラウザ「Firefox」の普及を促進するMozilla Japan代表理事 瀧田佐登子氏が登壇した。
「ブラウザは(ウェブページを)閲覧するだけだと思われがちだが、実はプラットフォームとしての側面も注目を浴びている」
瀧田氏は講演の中で、Firefoxというブラウザが果たしているもう一つ役割について解説した。
Firefoxのプラットフォーム的な特性に狙いを定めて成功した例は、米国のベンチャー企業発のサービスに多く見られるという。
典型的なのは3種類。まずはFirefoxをプラットフォームとする拡張機能、次に同じくFirefoxをプラットフォームとするウェブアプリケーション、そしてMozillaのテクノロジをベースとした単体のデスクトップアプリケーションだ。
瀧田氏によれば、現在、Firefox向けの拡張機能は2500個以上出ているそうだが、このプラットフォームを活用してビジネスを拡大したサービスも少なくない。代表的な例は「del.icio.us」である。
この老舗ソーシャルブックマークサービスは今でこそ多くのユーザーを抱え、Yahoo!に買収されるに至ったが、ブレイクのきっかけを作ったのはFirefox向けの拡張機能である。この拡張機能はFirefoxユーザーに非常に好評で、リリースしてから1カ月でdel.icio.usのユーザー数は35万人から50万人にまで急増した。
「これは1つのアイデアが企業を活性化することになった例。ツールバーをインストールしたユーザーがサービスを利用しはじめた。それにより、ユーザーもライフスタイルを変えて、時間を短縮することができるようになった」(瀧田氏)
人気のあるウェブサイトをユーザー同士で推薦し合うサービス「StumbleUpon」は当初、Firefoxの拡張機能だけでサービスを成り立たせていた。Internet Explorer版のプラグインを公開する前に、すでに300万ユーザーを獲得している。こういったソーシャルサービスのユーザー層がFirefoxのユーザー層に合致した結果と見られる。
そのほかにも、Firefoxに音楽の再生・検索機能を追加する「FoxyTunes」、ブログ投稿機能を追加する「ScribeFire」、P2Pファイル共有ツールとなる「AllPeers」など、Firefoxとの親和性の高さが新たなユーザー獲得につながっている例は多い。
ブラウザだけにとどまらず、Mozillaのエンジンそのものもプラットフォームとして注目されている。P2Pのネットテレビを実現するアプリケーション「Joost」は、「コアの部分はすべてFirefoxと同じようなMozillaのテクノロジーを使っている」(瀧田氏)。ブラウザベースではなくデスクトップアプリケーションという形で提供されている。
これを可能としたのが、ウェブアプリケーションをデスクトップでも実行できるプラットフォーム「XUL Runner」だ。同様の実行環境にAdobeの「AIR(Adobe Integration Runtime)」があるが、AIRの登場よりも前からXUL Runnerは公開されている。ほかに、iTunesライクなメディアプレイヤー「Songbird」もXUL Runnnerを利用している。
Joostは非常に好調だ。SequoiaやIndexといったベンチャーキャピタルからの出資を得たほか、広告主も集まりはじめている。6月5日には元CiscoのMike Volpiが最高経営責任者に就任することが発表された。同氏はインタビューで「JoostはこれまでのTVの代わりになるだろう」と述べている。
このようなベンチャー企業がMozillaの技術を使う理由を、瀧田氏は次のように語る。「一つの大きな要素はオープンソースであること。使っているテクノロジーがすべてオープンスタンダードであるという魅力。それからソフトウェアのライセンスを利用しやすい点。そして、やはりMozillaはマルチプラットフォームのテクノロジーであり、その部分が功を奏している」
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