2003年8月、韓国の大手企業であるSK CommunicationsがCyworldを買収することになった。強いビジネススキームを備えたCyworldは、大手の資本によりマーケティングに力を入れることができ、大きな成功を収めた。Cyworldの有料アイテムによる収入は、ネット広告よりも利益率が高く、しかも無制限に販売できるため、それまで広告収入に依存していた多くのサイトに希望をもたらした。2006年におけるCyworldの売上比率をみると、80%が有料アイテムの販売によるもので、広告はわずか20%という。
既存のコミュニティにおいて、ユーザーは自分が参加者になるというより、他のユーザーのコンテンツを読むといった受身的な姿勢であることが多かった。しかし、ミニホムピーから始まった自分の人生と生活を積極的に表現するというトレンドは、2005年に登場したブログ文化に受け継がれ、個人がより積極的にネット文化やコンテンツの制作に参加するように誘導した。
日本のmixiやGREEは、ネット専門家や若者だけではなく、一般の人がプライベートでネットコミュニティサービスを始めるきっかけとなったサービスである。 現在日本では業界ナンバーワンであるmixiが市場をほぼ独占しているため、その他のSNS事業者は第2のmixiになることを諦めかけているようにもみえる。
韓国でもネットサービス初期の頃、Daum Cafeに勝るものはないと誰もが信じ込んでいたが、現実はそうではなかった。次々とユーザーの心をつかむサービスが出てくるようになり、もちろん頻繁ではないが、愛されるサービスの名前も変わってきた。mixiにもまだまだ改善すべき点、まだ導入されてないサービスやアイテムがたくさんある。mixiの使い勝手の悪い所を改善し、mixiに飽きてきたユーザーを満足させるためにも研究を怠ってはいけない。
日本のデジタルカメラのモデル数の多さと変化の早さに筆者は常に驚かされていたが、それはおそらく世界有数のカメラメーカーを持ち、次々と新しいモデルを生み出している日本で、ユーザーが常に新たな機能を追求しているからであろう。
韓国人もITビジネスにおいては貪欲であったと思う。デジタルカメラが出てきたばかりのころは写真が撮れるだけで満足していたが、徐々に新しい機能を使いこなせるようになると、色々なアイデアにより工夫された製品が欲しくなり、今まで大事にしていた昔のカメラがたんすの肥やしとなってしまうのと同じことだ。
話は少し変わるが、今も韓国ナンバーワンのSNSサイトであるCyworldは、2005年に日本上陸を果たした。しかし、タイミング悪くmixiの成長期にかかってしまった。韓国で考えてみれば1999年のDaum Cafe全盛期に、いきなりCyworldをぶつけてきたようなものなのだ。
韓国Cyworldの創立者で、現在日本サイワールドの社長である李東炯氏に先日お会いしたが、彼も日本市場の参入時期や日本におけるローカル戦略に過りがあったことを認めていた。今後は日本市場の成熟段階に合わせた戦略を実施し、次のチャンスを狙うとのことである。つまり、いくらサービスの内容が充実していても、それを導入する時は、経済政策において国それぞれの発展段階によって異なる政策を実施するのと同様に、適切なタイミングで現地に合った戦略を繰り広げていかなければならないのだ。
逆に言うと、それこそほんの少しだけ先を行っている韓国のネットビジネスの流れや成功と失敗をよく研究しベンチマークすることで、日本におけるネットサービスの流れを先に読み取り、まだまだ可能性が高い日本市場を意外と簡単に攻略できるかもしれない。
もしかすると、日本で第2のmixiになれるサービスは、かつてCyworldがFreechalのユーザーをそっくり奪っていった時のように、mixiに載っている情報を簡単に移行できるプログラムと、ネット上の素敵な居場所を提供してくれるところになるのではないだろうか。
もちろんそれだけではなく、より使いやすいケータイSNSのインターフェースを提供することも次の飛躍に繋がる大きな鍵となることは間違いないであろう。
韓国生まれ。北海道に魅了され来日。東京大学大学院研究生過程修了。NHKニュース、国際ビジネス会議の通訳を経て、日韓コンテンツの海外ライセンスエージェントとして数多くの有名ドラマ・映画・音楽の版権事業にかかわる。2005年韓国にて日韓のIT、コンテンツビジネスのリサーチ&コンサルティングをメイン業務とする「ミュービック」を設立。日韓英3カ国語を駆使し、日韓IT企業のビジネス開発・戦略立案のほか、提携、投資、海外進出のコンサルティング業務を行う。
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