トランスコスモス、フロム・ソフトウェア、産経新聞の3社は6月5日、インターネット上での3D仮想世界(メタバース)事業を展開する合弁会社として株式会社ココアを設立した。現実世界の東京を再現したメタバース「meet-me」のアルファ版を2007年内にオープンする予定だ。2008年末までにユーザー数100万人を目指すという。
meet-meはWindows Vistaで稼動するソフトウェアとして提供される。携帯電話とも連携し、将来的には東京エリアだけでなく他都道府県エリアのメタバースも展開する計画。欧米やアジアからのユーザーを呼び込むために、英語、中国語、韓国語にも対応していくという。
サービスの大きな特徴は3点。一つ目はリアルな東京を忠実に再現することだ。道路や住宅の区画等にデジタル地図データを使用し、街の主要なランドマークも実在の建物を再現する。季節・天候・地価といった日常生活の構成要素も現実と同期させるという。これにより、ビジネス面でランドマークとなる物件を開発するディベロッパー、コンテンツホルダー、メディアなどとパートナーシップを結ぶ。第一弾としてアニメ制作会社のぴえろおよびプロダクション・アイジーと提携し、両社が開発するキャラクターをmeet-me内に登場させる。
二つ目は現実社会に限りなく近い“コモンセンスの維持”。meet-meでは、誹謗中傷表現や風俗的関係の情報など、公序良俗に反する行為を極力排除していく方針だ。女性や子供も楽しめる仮想世界を目指すという。
トランスコスモス専務取締役で、ココアの代表取締役に就任する森山雅勝氏は「普通のことが普通でないと、その世界が変になる。例えばエロやギャンブルは基本的にはやれない。普通に考えてだめだろうと思うことは制限できるように最初から組み込み、事後的な対応もとっていく」と述べた。
さらにもう一つ、meet-meの特徴となるのが「受身のユーザー」でも楽しめる仕掛けだ。メタバースはその自由度が売りであると同時に、ユーザーからしてみれば「何をすればいいのかわからない」という戸惑いを感じることもある。
そこでmeet-meでは、運営側がインフラの構築にとどまらず、初心者でも仮想世界を満喫できるような仕掛けを随時実施していくという。上級者向けにはプログラミングツール群を提供して表現活動をサポートする。
meet-meの開発・運用にあたっては、トランスコスモスがシステム、サービス、ビジネスの開発を担当し、家庭用ゲーム機向けソフトウエアの開発実績があるフロム・ソフトウェアがゲームシナリオとプログラムを作成する。そして産経新聞はメタバース事業の普及活動およびメタバース内におけるメディア事業を展開していく。
森山氏は「ここに未来みたいなものが作れるんじゃないかと思っている。子どもの頃は想像にとどまっていたが、このサービスによって“未来はこうだったらな”というものを作れたら」と、meet-meによって実現する新たな可能性に期待を込めた。
ただ、東京23区の面積は約621平方キロ。その中には170万あまりの建物が存在するという。そのような空間を仮想的に作り出す試みは、「開発にとって地獄」とフロム・ソフトウェア代表取締役社長の神直利氏は笑う。ランドマーク的な建物は制作しているが、その間を埋めるものはユーザーに自由に作ってもらうという。
産経新聞の取締役である阿部雅美氏はメタバースの持つ可能性を次のように評した。「インターネットとはまったく違うコミュニティの可能性を秘めている。日本でインターネットが96年に商用化された。当時は今のような機能やサービスが登場するとは誰も思っていなかった。そういう意味では、このメタバースはインターネットの初期のような段階にある。このようなメタバースの世界の理解と普及に力になれればと思っている」
その上で新聞社が本来持つ新聞、報道、言論をメタバース内外で発信することも可能だ。meet-meの中で起きた事故や詐欺といった事件をニュースとして現実世界に伝えていくほか、現実のニュースをmeet-me内で発信することも視野に入れていると語った。
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