5月15日にソウルで開幕した「第17回国際放送・音響・照明機器展示会」(KOBA)では、韓国内複数の放送局が自社サービスを紹介するブースを出展している。中でも目を引くのが、韓国文化放送(MBC)の紹介するモバイル放送(T-DMB)関連サービス。眼鏡なしで立体映像が楽しめる「3D-DMB」、番組シーンにあわせて端末が振動する「感性放送」など、日本とは異なるユニークなサービスを実践している。
3Dコンテンツの放送については、日本でも早くからNHKが研究・検討を重ねているが、現状では実用化には至っていない。その要因として「視聴者の目にかかる負担が大きい」「立体に見える角度(視野角)が限定される」ことなどが指摘されている。MBCでも同様の課題を挙げているが「長時間視聴することが少ないモバイル放送であれば負担は小さく、また視野角についてもユーザ任意での調整が容易」(担当者)と判断から、3D番組放送を07年初頭に開始した。視聴には専用端末が必要で、すでに10機種以上のモデルが発売されている。
「感性放送」は、07年末からのサービス投入を予定しているMBCの新サービス。いわば、ゲーム機などで実践されている振動体感の放送版だが「(ドラマなどで)主人公が緊張しているシーンで鼓動のような振動を体感できるようにするなど、放送ならではの応用性を持たせることができる」(同)とのこと。究極的には「臭いや感触まで伝わるサービス」を目指しているという。端末はLG電子との共同開発で、サービス開始目標である年末を目処に市場投入を予定。
T-DMBと並ぶKOBA展示会のメインテーマ「IPTV」については、依然として行政組織同士の綱引きが続いており、地上波放送のインターネット再送信実施には至っていない。「情報通信部(MIC)は積極的な姿勢を見せているが、放送委員会(KBC)はネット配信時における著作権の取り扱いなどを理由に反発。それに伴い、地上波放送局も再送信同意に慎重な姿勢で、実施の目処は立っていない」(韓国放送技術人職合会・李昌炯会長)。すでに様々な実証実験を展開し、送信帯域などインフラ面での準備は大部分で完了しているが、コンテンツ確保に苦労するという状況が続いているようだ。
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