今の時代、米大統領選の討論会をテレビで見るだけではもはや不十分だ。
その動画を「YouTube」に投稿し、共有し、つなぎ合わせて、「リミックス」することもできてしかるべきだ。
この主張は、著作権法改正の唱道者であるスタンフォード大学法学教授のLawrence Lessig氏が提起したものだ。Lessig氏は米国時間4月25日、民主党全国委員会(DNC)と共和党全国委員会(RNC)それぞれの委員長あてに、2008年の大統領候補討論会の動画を誰でもオンラインにアップロードし、配信し、編集できるようにすることを求める書簡を送付した。
Lessig氏は、DNC委員長のHoward Dean氏あてと、RNC委員長のMike Duncan氏およびRNC総委員長でフロリダ州選出の上院議員Mel Martinez氏あてに送った書簡の中で、討論会の動画コンテンツをパブリックドメインもしくはCreative Commonsのライセンス下に置き、「適切な(原著作者クレジットの)表示によって、討論会の終了後に誰でも自由にその動画にアクセスし、編集し、他の人たちと共有できるようにすることで」「インターネット革命における次の段階の到来を導く手助けをする」よう呼びかけている。
Lessig氏は取材に応え、「これまで返答してくれた各人の第一印象は、とても良好だ。これは、市民によるコンテンツ作成を促進するための先例となる」と述べている。
Lessig氏は、両党の委員長らに送った各書簡の文章を自身のブログに掲載した。同氏が最高執行責任者(CEO)を務める非営利団体Creative Commonsは、従来の著作権の基準に代わり、原著作者のクレジットを表示することでコンテンツを自由に使用できるようにする仕組みを推進している。
現行の著作権法では、大統領候補討論会のコンテンツの所有権は、それを放送した放送局に帰属することになる。Lessig氏が送った書簡では、オンライン動画の著作権に関する大型訴訟が相次いでいる事態を受け、大統領候補討論会では同じようなことにならないよう、両党の委員会に要請している。この件に関し、討論の模様を多数全国放送する予定のFox News、CNN、MSNBCなどケーブルニュースチャンネルの関係者にコメントを求めたが、回答はなかった。
Creative Commonsのライセンスにはいくつかのバリエーションがあり、原著作者はこれを適用する場合、通常の著作権法が定めるよりも狭い範囲の権利を留保することになる。原著作者が選ぶライセンスの種類により、その作品を使用する個人や組織は、適切なクレジットを表示する、非営利の目的に限って使用する、二次的著作物(楽曲のリミックス、ドキュメンタリーでの引用など)を作成する際は許可を得る、といったことが求められる。これまでのところ、大手のテレビ局やケーブル局はCreative Commonsのライセンスを採用していない。
Lessig氏の送った書簡には、政治の各方面から75人が署名をしている。DNCまたはRNCあてのどちらかの書簡のみに署名をした人もいれば、両方に署名した人もいる。こうした署名者には、新しいメディアにおける政治関連の大物も何人か含まれる。DNCあての書簡には、リベラル系ブログ「Daily Kos」の創設者Markos Moulitsas氏、2006年の上院選でJim Webb氏のオンライン選挙活動を担当して勝利に貢献したバージニア州在住の戦略家Lowell Feld氏、ニュースサイト「Crooks and Liars」の創設者John Amato氏などが署名している。
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