米大統領選と動画配信--レッシグ教授、討論会映像の自由なネット利用を訴え - (page 2)

文:Caroline McCarthy(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、高森郁哉2007年05月15日 16時56分

 ブログ界左派からの署名の多くは、活動家団体MoveOn.org Civic Actionによって集められたものだ。同団体のエグゼクティブディレクターを務めるEli Pariser氏も署名している。

 MoveOn.org Civic Actionの広報担当者Adam Green氏は、「4年前なら、大手テレビ局が動画の権利に排他的な規制をかける、独占的な取り決めとなっていただろう」と話す。Green氏によると、ウェブ動画は政治討論の状況を一変させたという。「まさしくYouTubeの年となる2008年には、普通の人々が、彼らの立場を代表する政治家を支持できるようになる。だからこそわれわれは、大手メディア企業の気まぐれに取り込まれることなく、大統領選討論会のコンテンツをパブリックドメインにするか、Creative Commons(のライセンス)にする必要がある」

党派の問題ではない

 Green氏の言説には確かに、反企業、草の根的な傾向があり、それゆえにMoveOn.org Civic Actionは、2004年の大統領選挙でとりわけ知名度を上げた。もっとも、同団体が名声を得たとするか、不評を買ったとするかは、政治的にどちら寄りかによって判断が分かれるのだが。しかし今回、Lessig氏の書簡にかかわった人々は、何よりまず、これが完全に党派を超えた取り組みだと主張する。

 「YouTubeで有権者たちに討論会の動画を共有する権利を与えることを、イデオロギーの問題にすべきではない。これはまったく民主主義そのものの問題だ」と、Green氏は話す。実際、オンライン動画によって討論プロセスを「民主化」することは、最近注目の話題となりつつある。Yahoo、Slate、HuffingtonPost.comの3社は4月23日、オンライン限定で米国大統領候補討論会を2回、2007年秋に主催する計画を発表した。News Corp.傘下のMySpace.comも、動画を多用するチャネル「IMPACT」を立ち上げており、2008年1月1日と2日の両日にオンラインの模擬大統領選を実施する計画だ。こうした新しいメディアを使った政治的試みは、Lessig氏の書簡のように、超党派のイメージをアピールしている。

 Lessig氏は、「これは、明確なコンセンサスが存在する問題であり、そのことを前もって明らかにすることが非常に重要だと思う」と述べ、超党派の取り組みを強調することは選挙が近づくにつれ次第に困難になるだろうと指摘した。「選挙活動が進むに従い、われわれの利害関係がより複雑になっていくことは明らかだ」

 実際、RNCあての書簡には著名な保守系の評論家やブロガーが署名しており、Michelle Malkin氏、ブログ「Instapundit」の運営者Glenn Reynolds氏、「Redstate.com」の共同設立者Mike Krempasky氏などの名が並ぶ。

 Krempasky氏は、「それぞれが属する集団は多様だ。もし署名者の誰かや私自身が議員だったら、95%の確率で反対されると思うが、われわれは議員ではないので問題ない」と述べている。オンラインの熱狂的な政治活動家とYouTubeの多数ユーザーの集合的な勢力を止める手立てはないのだから、両政党は「呉越同舟」で臨むべきだと、Krempasky氏は考えている。

 「率直に言おう。オンライン動画を阻止するためにできることはほとんどない。出てきた動画に反応し、弁護士を雇って削除要請書を送付してもいいし、どんなばかげたことでもやりたいようにやるのは勝手だが、やはり止めることはできない。これまで何度も繰り返されてきたことだ」と、Krempasky氏は語る。

 また、インターネット界の名士たち、たとえば「Wikipedia」の設立者Jimmy Wales氏、サイエンスフィクション作家でブログ「Boing Boing」を運営するCory Doctorow氏、オンライン案内広告「Craigslist」の設立者Craig Newmark氏などは、両方の書簡に署名している。Newmark氏は、「この人脈が愛国的な働きをして、動画が利用可能になる」と思う、と述べた。

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