シャープ、決算発表後の株価下落も反発接近か

 シャープは好調な2007年3月期の連結決算と2008年3月期の連結業績見通しを発表したものの、それを受けて株価は下落に拍車が掛かる皮肉な展開となった。なぜか──。

 市場関係者によると、株価が下落した背景は「2008年3月期の連結業績見通しの営業利益の予想数値が前期2%増の1900億円と微増益に止まり、事前の市場関係者の予測水準を下回ったことが失望感を誘ったため」としている。しかし、今3月期の連結営業利益には、税制改正に伴う減価償却負担の増加という利益圧迫の特殊要因があるうえ、予想数値自体も「上方修正含みの非常に堅めな数値」(外国証券アナリスト)との見方も浮上し始めており、株価が上昇トレンドに転じるタイミングも近そうだ。

 シャープが4月25日に発表した2007年3月期の連結決算は、売上高3兆1278億円(前々期比12%増)、営業利益1865億円(同14%増)、経常利益1705億円(同13%増)、純利益1017億円(同15%増)と2ケタの増収増益となった。

 大幅な増収増益となったのは、液晶テレビや液晶ディスプレイを中心に、大幅な価格下落によるマイナス要因があったにもかかわらず、携帯電話の販売好調や液晶ディスプレイの製造コスト低減努力による採算改善などが奏功したためだ。携帯電話販売ではワンセグ(携帯機器向け地上デジタル放送)対応モデルが好調で、1481万台(前々期比18%増)と拡大した。金額ベースでは高付加価値機種の好調で、前期比29%増の6073億円となった。液晶テレビの販売台数は603万台(同51%増)、金額ベースでは6135億円(同49%増)となり、平均単価は、世界的な薄型テレビの価格下落が影響し、2005年度よりも1台当たり900円低下し10万1700円となった。

 2008年3月期の連結業績について同社は、3兆4000億円(前期比8.7%増)、営業利益1900億円(同1.9%増)、経常利益1750億円(同2.6%増)、純利益1050億円(同3.2%増)にとどまるものと見込んでいる。

 同社の業績予想がかなり控えめとなっているのは、今期から税制改正による減価償却制度変更に伴って、減価償却費が従来の計上方法に比べて200億円程度増加する見通しとなっているためだ。この特殊要因を除いて考えると、実質的には営業利益2100億円(前期比12%増)と今期も2ケタ増益を確保できる試算になる。これは、今3月期も引き続き40インチ以上の大型液晶テレビの価格下落が継続するものと見込まれるものの、亀山第2工場の本格増産によって、液晶ディスプレイの採算改善が寄与することが期待できるためだ。

 さらに、会社側は今期の想定為替レートを、1ドル=115円、1ユーロ=150円としているが、実際の為替レートがこの水準に比べて円安での推移となった場合は、さらに利益が上方修正されることになりそうだ。

 株価は3月入りとともに順調な上昇を続け、4月9日には年初来高値2445円をつけたものの、その後は利益確定売りが先行する値運びとなり、25日の決算後も下げが加速し、2100円台まで下押す展開を強いられた。しかし、減価償却費の計上方法変更による特殊な利益圧迫要因を除けば今期も実質2ケタ増益が確保できる見通しとなっていることから、まもなく株価も反転上昇軌道へ回復する可能性が高そう。中期的には年初来高値更新後2500円台での活躍も期待できそうだ。

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