元社長の堀江貴文被告が築き、壊していった「ライブドア」ブランド。ライブドアグループの事業会社となり、ネット事業を軸に展開するライブドア社長に就任した出澤剛氏は、「ライブドア事件」からこれまでの激動の時の中で何を思い、そして今後何を目標に同社を導いていくのか──。
海外展開も視野に入れた技術力の強みを前面に押し出す出澤氏と、技術領域を指揮する同社執行役員CTO(最高技術責任者)の池邉智洋氏に聞いた。
出澤氏:事件当時は対症療法じゃないですけど、目の前のことを右から左へ流してという、交通整理をずっとやっていた状況でした。全方位的に事業を展開してきたこれまでの戦略を捨てて、事件前はずぶずぶだったコストの見直しを行って、ニュースとブログとモバイルの三本柱で行くと宣言をしたのが、2006年9月の初頭ぐらいですね。
堀江さんの時代の「目先の収益よりトラフィック拡大が先」というゲームのルールを変えたんです。社員研修で、「“対ヤフー”じゃなくてこっちだよ」という話をして、「インターネットメディア事業単体で収益を出さなければならない」ということを、社員全員で確認し合いました。
もともと堀江さん自体、数字に落とすタイプではなくて、“世界一”とか“売り上げ1兆円”とか大きい事を言って、「あとはお前らで考えて頑張れ」というタイプだったので、細かな戦略を練り直したり、数字への落とし込みをちょっとずつやってきたという感じですね。
出澤氏:我々にとっての広告クライアントは代理店さんになるので、接点は変わっていません。その他、データセンター事業で言うと、4000社ぐらいの法人クライアントがいるわけですが、安定した運用が評価を受けているので、顧客離れは起きていないんですよ。広告と違って「ライブドアだから…」ということにはなりませんから。
広告の売り上げも、4月の段階で事件前の7割まで戻ってきましたし、大手配給会社の映画キャンペーンも決まったりしたので、売り上げも回復しています。事件前水準も射程に入っていて、8月か9月には単月で黒字化するメドもたっています。
出澤氏:一番良かった点は、ゴチャゴチャになっていた業務が整理されたところでしょうか。いろいろな会社を管理する持ち株会社としての側面と、インターネットサービス業の側面が一緒くたになってましたからね。
実は、ライブドアという会社は、データセンターの運営もしていて、ユニークユーザーも伸びている会社で、新しいサービスを今後もリリースしていくんだよ、ということを知ってもらう良い機会になったと思いますし、立ち位置が明確になって、やっと新しいスタートラインに立てたことで、我々のマインドもまたリセットされたと思いますね。
出澤氏:少なくとも私はそう思っています。弊社は設立10年のインターネットをやっている社員300人のベンチャー企業なんです。ただし、ベンチャーの持っている、リスクテイクして新しいものに挑戦するというスピリッツは、誇るべきものだと思っています。
事件後、「虚業じゃないのか」という言われ方もしましたが、少なくともネット事業にいた人間からすると、“あんまりチャラチャラしてなかったよね”っていうのが正直な気持ちなんです。夜通しメンテナンスをしたり、納期前に徹夜して仕上げたり、ずっと真面目にモノづくりにこだわってきたわけですから。
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