30周年を控えるx86アーキテクチャ--「愛され続ける」その理由 - (page 3)

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、高森郁哉2007年04月12日 17時46分

 その程度のわずかなパフォーマンスの改善なら、x86からの劇的な移行の誘因にはならないだろうと、IntelのDigital Enterprise Groupでシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるPat Gelsinger氏は語る。ベテランのチップ設計者でもあるGelsinger氏は、古いアプリケーションを実行できる既存の設計のままで、「当社は、毎年2倍に向上したパフォーマンスを提供している」と話す。

 チップ業界がプロセッサに集積するトランジスタを増やし続けることができるなら、レガシーコードを存続させるのに必要なトランジスタが全体に占める割合は次第に小さくなる。「互換性のための負担は存在する。しかし、互換性の価値がそれに伴うコストを圧倒する」と、Gelsinger氏は指摘する。

 この勝負の中でワイルドカードになる可能性を持つ技術改良があるとすれば、それは、2つ以上のプロセッシングコアを搭載した新型チップの導入だ。チップメーカーは、単一の高速コアを搭載する場合に生じる消費電力の問題を回避する手段として、速度を抑えたプロセッサコアを複数搭載するチップを製造してきた。ただし現時点では、各コアが同じ命令セットを使う必要がある。

 一部の人々は、将来的には混在が可能だと考えている。より小型で、より電力効率に優れたコアが、たとえば動画処理のような特定タスク専用のISAを採用したx86上に作られるかもしれない、とArvind氏は予想する。

 IBMは、これに近いことを「Cell」プロセッサの設計で実行した。Cellはソニーの「PLAYSTATION 3」に搭載され、中心的な役割を果たしている。Cellは1つの「PowerPC」を、8基の独立した処理ユニットの管理者のような役割で利用する。さらに先の時代になれば、チップ製造企業は、基本的なx86コアで後方互換を維持しつつ、専用のハードウェア--x86を実行するかどうかはともかく--で次世代の複雑なプロセッシングタスクに対処するようになるのかもしれない。

 アナリストのMcCarron氏によると、こうした移行の最初期の段階が、たとえばAMDの「Fusion」(開発コード名)プロジェクトといった取り組みに見られ、AMDはFusionでグラフィックスプロセッサをPCのプロセッサに統合する計画だという。今後10年のうちに、さまざまなISAを採用したコアが混在するプロセッサが実現するかもしれないと、McCarron氏は予想する。

 ただし、あてにはできない

 「(x86の)強みは、進化論的なアーキテクチャで、問題が浮上したらそれに適応するという点にある」と、McCarron氏は語る。「これが、今まで出てきた中から最終的に選択されたのだ。すべての互換性を保ちつつ動作させるという目的こそ、われわれがこだわる部分だ」

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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