「finger」コマンドは、1970年代初めにLes Earnest氏によって生み出された。それ以前にもEarnest氏は、世界初のスペルチェッカーと筆記体対応の手書き文字認識技術を考案していた。現在、Earnest氏はスタンフォード大学コンピュータ科学部の名誉上級研究員として働くかたわら、熱心なサイクリング愛好家としてサイクリング協会の役員も務めている(彼のことをさらに詳しく知りたいなら、Earnest氏のインタビュー記事(英文)を読んでほしい)。
Earnest氏は電話インタビューに答え、次のように語った。「これは今のブログと同じように使われていた--要するに、.planファイルは、これからすることをほかの人に伝える手段として作ったものだ。休暇で出かけるとか、旅行に行くとか、あるいはちょっと寝てくるといった予定を、.planファイルに書き込むことで周知できる。やがて、さまざまな事柄についての個人的な見解を表明するのにも.planファイルが使えることがわかると、人々は早速、そのような用途で利用しはじめた(中略)。個人的な見解を表明するという点で、ブログ、しかも個人のブログと非常に近いものだった」
Earnest氏考案の「finger」コマンドと.planファイルは、1977年12月には(RFC 742として)正式に標準に加えられ、1991年には改定された(その途中にはもちろん、セックスに関する話題に目がないコンピュータ科学専攻の大学生の間で「わたしをfingerで興奮させる方法」にまつわる無数のジョークも誕生した)。
.planファイル、もしくはこれを読む方法は、業務用の名刺に印刷され、ギークコード(Geek Code)にも含まれていた。ギークコードとは、プログラム言語風の表現で自分のオタク度を示す、1990年代半ばに流行した自己紹介の形式だ。
学生たちは、.planファイルを使って日誌をつけたり、スケジュールを公開したり、テコンドーの練習について話し合ったりした。1994年には、カーネギーメロン大学在籍のある学部生が、数百ページにもおよぶ.planファイルに、とりとめのないオンライン日記をつづった。今でもその一部は残っている。
しかし、.planファイルは単純なテキストファイルだったため、最も高機能なものでも、RSSやCSS、トラックバック、テキストのフォーマット化、ハイパーリンク、そしてもちろんコメントなど、今のブログでは当然とされている機能は含まれていなかった。
上記のような機能は、ウェブの誕生以降に徐々に追加されていき、その中でJustin Hall氏が、ウェブベースの日記を最も早く始めた人物の1人として、当時目新しかったウェブ日記というメディアでさまざまな実験を行った。この「links.net」が、冒頭で触れた「New York Times Magazine」誌の記事で紹介され、この中で同氏は「ブログの開祖」と呼ばれることになる。links.netに掲載されているのは、Hall氏がスワスモアカレッジの学生だったころに書き始めた、極めて個人的な内容の日記だ。現在、同氏は自ら「受動的多人数参加型オンラインゲーム」(passively multiplayer online games)と呼ぶ研究領域に取り組んでいる。
19日に行われたインタビューの中でHall氏は、こうしたことを始めたのは1994年1月だったと述べた。「オンラインで見たありとあらゆるホームページに刺激された--ある科学者と飼い犬の写真、彼が集めた古い英語のなぞなぞなど、何でもだ。単純で、取るに足らないものだったので、こうしたページを作るのは簡単なのだろうと思った」とHall氏は語る。「実際、難しいことなど何もなかった!ページをアップするやり方を一度覚えてしまえば、相互にリンクされたテキストをどんどん作成できた」
Hall氏は、自分が最初のブロガーだとは主張していない。むしろ、似たようなサイトが同時期に自然発生したと考える方がよいというのが、同氏の見解だ。Hall氏は「世界初の活版印刷機のありかなど、わかっているだろうか?」と問いかけ、「それを突き止めようという人には、せいぜい頑張れ、としか言いようがない」と述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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