Barger氏は電子メールで、次のように述べた。「Winer氏はこれを『ニュースページ』と呼んでいた。だが、わたしの場合は、ニュースをメインにするのではなく、読んだり訪れたりする価値があると思われるものなら何でも紹介するつもりだった。そこで、いよいよタイトルを考える段階になったところで、さまざまな候補の中で既に使われているものがあるかどうかを、AltaVistaで調べてみた(『ログ』という言葉は、このサイトの内容を的確に表すものとして必要だと考えていた)。『ウェブログ』は、それまでも『サーバログ』『htmlログ』と同じ意味でサイト管理者が使っていたが、あちらにはウェブログ以外に用語の選択肢もあったので、当方としてはより広い意味を持つこの言葉を使うことにした」
しかし、インターネット界の長老たちが口々に証言するように、初期のネットの住人たちも自分の私生活のあれこれを人に打ち明けたり、政治について意見を述べたりするのに熱心で(ただし、当時は飼い猫の面白い仕草が話題になることはなかったはずだ)、その力の入れようは今のブロガーにも決して負けていなかった。こうした用途には、メーリングリストや、1970年代初期に考案され、今はほぼ忘れ去られた「.plan」ファイルといった手段が使われていた。
.planファイルとは、UNIXシステム上の各個人アカウントに付加可能な、誰でも閲覧できる任意の長さのテキストファイルで、ブログと同様に、最新項目がトップに掲載され、その後に新しい順に記述が並ぶという形で利用されることが多かった。当時のインターネットユーザーは、自分の.planファイルを編集し、私生活や仕事のプロジェクト、現実の本質に関する考察などを事細かに書き加えることができた。
多くの人がこれを利用した。もっとも有名な.planファイルの1つに、John Carmack氏が作ったものがある。Carmack氏はid Softwareの共同創設者で、「Doom」「Quake」「Wolfenstein 3D」などの大作ビデオゲームで主任プログラマーを務めてきた人物だ(Carmack氏の.planファイルはその後、ブログ形式に変換され、今も公開されている)。
Carmack氏がは.planファイルの更新を頻繁に行い、その中には「qportをよりランダムにした」「マップの再接続を修正した」のようにプログラミング作業の進展を報告するものもあった。そのほかにも、語りかけるようにつづられた「Quakeにはバグがある。それは率直に認めるし、残念にも思う。でも、Quake 1の開発はもう終わっているから、残っているバグが修正されることはないだろう。問題点はすべて洗い出し、Quake 2ではこうしたことが起こらないようにしたいと思う」という記述もある。
また、ささやかな.planファイルが、草創期のLinuxカーネル開発の歴史に足跡を残したことさえあった。Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏は、1991年7月、カーネルに関する初めての投稿の中で、オペレーティングシステム(OS)の標準について助言を求めた。さらに余談として、Torvalds氏は自分の.planファイルをカスタマイズして自動更新できるようにしたと述べたが、当時はこちらのほうが投稿の本題よりもはるかに注目を集めた。
Torvalds氏のUsenetへの投稿は、最終的にAri Lemmke氏の目にとまった。Torvalds氏自らが記したLinuxの歴史によれば、Lemmke氏はLinuxの名付け親(Torvalds氏は「Freax」という名称を提案していた)であり、その後世界で最も人気のあるOSの1つになったLinuxにオンライン上の「家」を提供してくれた人物だという。
.planファイルを読むには「finger」コマンドを用いた。「finger」コマンドが生まれたのははるか昔で、インターネットが登場する以前のARPANET時代にまでさかのぼる。
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