Microsoftは、「Vista」のライセンス条件の緩和を進め、企業が「ディスクレス」PCなどの新しいコンピュータの使用法を試験的に導入することを可能にしようとしている。
Windowsのライセンス条件の大半は、PC全体がすべて一カ所にまとまっているものと仮定しているが、それが必ずしも当てはまらないケースが増えつつある。
仮想技術では、物理的な1台のコンピュータが複数の別々のコンピュータとして動作可能で、一方でネットワークの高速化により、コンピュータの各種パーツを複数の場所に置けるようになる。たとえば、現在はコンピュータのメインハードディスクが実際にはデータセンターにあり、プロセッサ、グラフィックチップ、メモリなど、ほかのすべてのパーツは作業場に設置されているディスクレスPCが実現されている。
しかし、米国時間4月1日まではこうしたコンピュータに適したWindowsのライセンス条件が用意されていなかった。「Windows Vista Enterprise」エディションの新しいライセンス条件では、このようなケースのほか、PCのストレージ、計算処理能力、あるいはその両方をそのPCの外部で処理する特殊なケースでも同エディションが使えるようになる。
Windows Business GroupのディレクターであるScott Woodgate氏は、「金融や政府関係のアーリーアダプターが、特にWindowsを一元管理するアーキテクチャを活用できるよう対応を進めている。彼らは、Windowsのストレージ、Windowsの実行処理、あるいはその両方をデータセンターに集約している」と語っている。
MicrosoftはディスクレスPCに加え、サーバ上で動作する複数の仮想マシンを運用するデスクトップPCやシンクライアントの環境も承認している。Vista Enterpriseのライセンスではすでに、デスクトップPCでの利用に限り、Windows仮想マシンの追加ライセンスを提供している。しかし、これまでサーバには適用されなかった。「Vista Enterprise Centralized Desktop」と呼ばれるこの新しいライセンスは、別途年間利用料が必要になる。
Microsoftはこうした仕組みを合法的に許可しようとしているが、ディスクレスPCが一気に流行することには懐疑的だ。それは、通信が遮断されることのない高速常時接続ネットワーク回線が必要なことをはじめ、否定的な要素が多いためだ。もしネットワークが切断されれば、PC全体が利用できなくなる。また、MicrosoftがディスクレスPCを商業的に利用可能にしても、このようなシステムを起動させるサードパーティーソフトウェアが必要になる。
技術的な制約や、その運用には膨大なIT資源が必要なため、Microsoftでは、最高機密を扱い、セキュリティ確保が利便性よりも優先される政府機関など、このような設定を試す組織は一部に限られると予想している。
CIAやFBIなどの機関に言及しているものと思われるが、Woodgate氏は、「名称を3文字で省略するような機関では、ハードディスクを手元に置きたくないと考えるかもしれない。これは比較的特殊な市場だ」と語った。
Microsoftによると、このようなケースでさえ、システムを準備して運用を開始するには時間がかかるという。Woodgate氏は「アーリーアダプターがシステムの本番運用を開始して18〜24カ月後にどの程度成功しているかが興味深い」と語っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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