そのため、McGuire氏は開発チームを率い、スラッジを吸入するシステムを開発した。また、ノズル部分を改良し、並んだ噴出口が「Cuisinart製のフードプロセッサのように回転する」仕組みを作ったとMcGuire氏は言う。
今のところ、Ecosphere Technologiesの事業規模はきわめて小さく、2006年7月から9月の四半期の売り上げはおよそ100万ドルだった。しかし、環境規制が厳しくなり、環境コストが高くなったことから、需要は急増している。Maybaum氏によれば、1人の作業員が操縦装置を使ってM3500ロボットシステムを操作するだけで、船体の塗装をおよそ7日から10日で落とすことができるという。同じ船の塗装をサンドブラスティングで落とそうとすると、10人を超える人手がかかり、時間もさらに必要となる。
また、サンドブラスティングでは清掃作業も必要となる。運送船と貨物船では、何トンものグリットを廃棄する作業も加わる。客船の場合はもっと手間がかかる。グリットを封じ込めることができないため、船室や他の部屋に入り込んでしまう可能性があるからだ。したがって、船旅会社からM3500ロボットの引き合いが出始めているとMaybaum氏は述べた。
全体でどのくらいの費用が節約できるかは、契約条件と地域事情によって変わってくる。BAE Systemsは、ロボットによる作業をサービスとして含めた5年契約をEcosphere Technologiesと結んだ。BAE Systemsとの最初のトライアルでは、M3500は米海軍船「USNS Henry J. Kaiser」の船体を2週間足らずで洗浄した。Ecosphere Technologiesからの請求額は11万1000ドルだった。一方、シンガポールにある乾ドックの運営者たちは、M3500を即刻購入しようとしている。
Ecosphere Technologiesは、船体のクリーニングテクノロジだけではなく、トレーラーに搭載する緊急浄水装置も開発した。2005年8月のハリケーン「カトリーナ」の後、同社はトラック輸送面でPierce Manufacturingの協力を得て、当時2500人の市民が被災していたミシシッピ州ウェーブランドに浄水装置を運んだ。
「消火栓の汚れた水を引き込んで浄化する作業を6週間続けた」とMcGuire氏は言う。
緊急時に水を浄化するこのシステムも、水圧を利用する。一連のフィルタと薄膜に高い水圧で水を通すことで、中の異物と細菌を除去する。さらに、水にオゾンを注入して微生物を殺す。ただし、オゾンは薄膜とは離されているため、薄膜がオゾンによって劣化することはない。
この移動可能な浄水装置は1時間に30ガロン(約114リットル)の浄水能力があり、太陽電池でも稼働する。
では、水はいったいどの程度浄化されるのだろうか。米国土安全保障省が、生物テロによる攻撃を受けた水をこのシステムでろ過できるかどうか実験を行った。以来、環境保護庁は、生物テロ攻撃を受けた場合にこのシステムが利用できると認証している。
この浄水システムはおもに緊急用に開発されたものだが、移動可能な分散型の浄水システムの需要は急速に高まると見込まれている。たとえば、インドの人口密度が高い都市部に住む人々は現在、水の確保をトラック輸送に頼っているが、それは上水および下水のシステムが壊滅的状況にあるためだ。また、General Electric(GE)は、食料品チェーン店と協力して浄水設備の設置を進めており、移動式浄水トラックの開発も行っている。
一方で、Ecosphereは、今後もこの技術を利用できるものへの可能性を探っていくとしている。
「われわれはいつも高圧水を使用して実験している」(McGuire氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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