勝屋:なるほど。ちなみにお2人の出会いはどんなものだったんですか。
宮澤:当社の創業メンバーに片山という者がいるんですが、彼がある時、赤坂ブレックファーストクラブというエスタブリッシュな方たちの朝食会に紛れ込んじゃったらしいんです。どう考えても入る部屋を間違えたんだと思うんですけどね(笑)。その時、隣にいたのが郷治さんだったようです。
郷治:すごく変わった奴で・・・(笑)、とても投資案件につながるとは思っていなかったんですが、とりあえず話が合ったので「今度会社に行くよ」と言ったんです。そうしたら実は社長が東大出身だというので、「じゃあ1度会いましょう」ということになって・・・。それが2004年の7月くらいですね。
宮澤:僕は東大がVCを始めたというのをちょっと耳にしていたくらいで、概要はまったく知らなかったんです。だから最初は会うのもすごく緊張しました。まだ創業2カ月くらいの、明日つぶれてもおかしくないというような時期でしたからね。
勝屋:お互いの第一印象はどうだったんですか。
郷治:人なつっこい人だなという印象でしたね。あと、自分の足りないところや改善すべきところを貪欲に知ろうとする人で、いい意味でアドバイスを受け入れられる人でした。若くて人の意見なんか聞かないような起業家ではなく、先人から学ぶという姿勢があって、今すぐ投資をするかという話を抜きにして、継続的にいろいろと話をしていきたいなと思える人でした。
宮澤:最初は母校ということもあって緊張していましたし、実績もないので、とりあえず思いを語ろうと、なぜ僕がこの会社を始めたのかを一生懸命話した記憶があります。郷治さんもそれを一生懸命聞いてくれて、自分がなぜ今のファンドを始めたのかも熱く語ってくれました。もともと通商産業省(現経済産業省)にいらっしゃって、そこからファンドを立ち上げるまでの苦労も含めて、いろいろ話をしましたね。
勝屋:郷治さんが創業まもない頃のシリウステクノロジーズに投資しようと考えた理由は何だったんですか。
郷治:最初はいろんな意見を交換するというか、思いをぶつけ合うという関係だったんですが、2005年の2月ごろから宮澤さんが今後のシリウスの方向性についての問題意識を物凄く深め始めたんです。それまではサイトの受託制作などで事業を回している状態だったんですが、大きな事業法人を相手にするようなことをやっていかないとダメだと思うようになりました。
じゃあ何をやればいいのかという議論が4月くらいから始まって、6月になってアドローカルという携帯電話を使った位置連動型広告事業が見えてきたあたりから、これは面白いなと感じて投資を検討する気持ちが湧いてきました。結果的に11月に私たちがリードインベスターとして4200万円の単独投資をしました。ほかのVCが投資をしたのは年が明けた2006年の3月からですね。
勝屋:Web 2.0関連のベンチャー企業にはVCがたくさん集まってくると思うんですが、宮澤さんが東大エッジキャピタルに投資をお願いしようと思った理由は何ですか。
宮澤:お会いしたのが創業間もない頃だったということもあるんですが、出資して頂くまでにもいろんな方を紹介してくれましたし、機会があれば会って話をしてくれたことで、信頼関係が少しずつ形成されていたというのがひとつですね。
もうひとつはやはりファンドのコンセプトが素晴らしいということです。たとえば僕らが上場した際に生じるファンドのリターンが投資家に還元された後、残った額の一部が大学に戻るんです。そういうスキームのファンドはなかなかないですよね。
シリコンバレーの経営者たちもある程度成功すると大学に寄付をしますが、そういうのはすごく健全なスタイルだと思うんです。後輩が育っていく循環サイクルは重要だと思っていて、それを意識せずに自然な形でやるには東大のVCにリードインベスターとして入ってもらうのが一番良い形だなと思ったんです。だから僕は東大エッジキャピタル1社に絞ってお願いしました。
郷治:宮澤さんのような人がロールモデルになって、東大の学生、ひいては東大以外の学生たちが自分で起業するような土壌を作りたいという気持ちが強かったですね。
勝屋:宮澤さんがこれまで経営してきて、郷治さんがいてくれて助かったなと思うのはどんなときですか。
宮澤:まず何より最初にリスクを取って出資してくださったことは一生忘れないと思います。当時は何の実績もなく、失敗する可能性の方が大きかった。そんな状況の中、融資以外で初めてお金を出してくれたのが郷治さんなので、今でも感謝しています。それがあったからこそ、今いろいろな方から評価してもらっている各種のサービスが生まれています。今のシリウステクノロジーズがあるのはその時の投資判断のおかげですね。
それと、投資後も社外取締役として経営に参加して頂いて、経営状況の確認などをしてもらっているんです。でも、役員の前では相談できないこともあるじゃないですか(笑)。ですから役員会とは別に会ってもらったりしています。
勝屋:たとえばどういう問題を相談しているんですか。
宮澤:会社を強くしていくにはどの事業会社と組めばいいかとか、人事の問題とか。今は社員が35人くらいになっているんですが、10人、20人と社員が増えていくと悩みの質も変化してきますからね。その都度、相談していました。
1982年北海道札幌市生まれ。2004年東京大学農学部卒業。在学中より友人とIT関連事業を興す。2004年5月シリウステクノロジーズを創業し代表取締役社長に就任。2006年10月Style1の社外取締役に就任。執筆書籍に、SNSビジネスガイド(インプレス)やMobile2.0(インプレス)がある。家族は、2歳になる息子がいる。
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