映画「THX 1138」をご存じだろうか。これはあのGeorge Lucas監督が手掛けた初の長編映画で、1971年に公開された作品。同監督が生み出した数ある大ヒット作品の中ではカルト的な存在だといってよいだろう。だが、奇妙な符合がある。サンフランシスコにあるLucasfilmの巨大なデータセンター、その帯域容量が現在、合計で「11.38」ペタビット/秒だというのだ。
実際には、この数字は同社内にある1Gビット/秒の全デスクトップマシンと、10Gビット/秒のバックボーンの帯域容量を掛け合わせた数字であり、ただの理論値にすぎない。だが、米国時間1月23日に発表されたアカデミー賞ノミネート作品のうち4作品にかかわり、「スター・ウォーズ」など歴史のつながりを生かした映画制作を得意とするLucasfilmが、この符合を単なる偶然と片付けることはないだろう。
10Gビット/秒の転送率を持つバックボーンは、同データセンターのネットワークの中核だ。この数値は、大部分のサーバの転送率が一般的に1Gビット/秒前後であることを考えると、業界標準よりもはるかに高いことになる。
LucasfilmのITオペレーションディレクターであるKevin Clark氏は、「うちの会社は、この容量を変えたがってはいない」と語る。
多くのITプロフェッショナルの目には、Clark氏は世界一魅力的な仕事を手にした人物に映るだろう。それはどういうことか。エンタープライズソフトウェアメーカーのAutodeskに数年間在籍した経歴を持つ同氏は現在、Industrial Light & Magic(ILM)、LucasArts、StarWars.com、Lucasfilmで構成される「Lucasfilm帝国」のコンピューティング機能を収容する、巨大なデータセンターの管理を任されているのだ。その規模は実に1万平方フィート(約929平方m)。ただ、同氏はこの規模をGoogleや大手金融機関に匹敵すると評しているが、そこまでは大きくないだろう。
Lucasfilmのデータセンターは、同社の拠点であるLetterman Digital Arts Center(LDAC)の低層階にある。運用が開始されたのは、2005年、Lucas監督がその帝国の大部分をサンラファエルにあった以前の拠点からサンフランシスコ湾を越えて同市内のプレシディオ地区に移し、LDACを開設したときだった。ゴールデンゲートブリッジのたもとの一角を占める同地区には、以前は米陸軍の基地が置かれていた。
データセンターの大規模移転というのは、どのような企業にとっても業務の混乱や中断の原因となりやすい。Clark氏とそのチームは、数々の大作映画やビデオゲームをはじめ、当時同社がかかわっていたさまざまなプロジェクトへの影響を最小限に抑えるため、対策を検討しなければならなかった。
「社内システムが停止した場合の影響といえば、電子メールを数時間使えないくらいだが、データセンターのシステムが停止しようものなら、5000万ドルの損失が出る」と、ILMで技術広報を担当するGreg Grusby氏は語っている。
Clark氏によれば、同データセンターのコンピューティングパワーは実際、世界のどの映画映像制作会社よりも「はるかに勝っている」ということだ。
Lucasfilmのデータセンターには、現在合計2000を超えるサーバがある。その中核となるのは、「Opteron」デュアルコア/デュアルプロセッサと16Gバイトのメモリを搭載する、198台のVerari Systems製サーバだ。同データセンターでは、3つの両面3段ラックの各段に11台ずつ並べる形で、すべてのサーバを格納している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス