2006年も余すところ、わずか1カ月となった。思い起こせば2005年の中頃には新規参入キャリアの免許交付や番号ポータビリティ制度(MNP)の導入を前提に「2006年はモバイル業界にとって、良かれ悪しかれエポックメイキングで変革の年になるだろう」と言ってまわったものだ。
また4月より開始された携帯電話向けワンセグ放送や昨今話題のMobile2.0的アプローチのコンテンツや各種サービスが、この業界構造の変化に重なる形で登場してきた。本稿ではこれらの事象がモバイル市場、特にコンテンツプロバイダーと携帯電話ユーザーにとって与える影響を取り上げたい。
新規キャリアの参入やMNP制度の開始は、コンテンツプロバイダーやソリューションベンダーにとって「ビジネスチャンスの拡大につながることは間違いない」と思われる反面、多くの落とし穴が待ち構えていることも事実だ。なぜならば、これらのビジネスチャンスとは、何らかの理由で携帯電話を所持していなかった少数ユーザーの新規開拓を除けば、基本的には市場全体の拡大ではなく、同一のパイの中でのシェアの獲得競争であるからだ。
そのため、過度の期待を抱いて、盲目的な投資によって事業の拡張を目指すことは危険な行為とも言える。しかし、競争の結果、良きサービスの提供や付加価値の高いコンテンツが現れ、ユーザーの購買心理を揺さぶり、客単価の大幅な向上を招くことができれば、業界にとって良きシナリオだったと言えるだろう。新規参入やMNPによって純粋な新規市場の創造も可能性がない訳ではないのだ。
MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体サービス事業者)についてもコンテンツプロバイダーをはじめ業界の期待が大きいことは事実だが、その実態はまだまだ暗中模索といった状況だろう。コンテンツプロバイダーにとっては、具体的なビジネスがもう少し動き出してみないと、対応に向けた方針立案はかなり難しいものではないだろうか。MVNOそのものは新規の市場の創造という点では比較的明快ではあるが、具体的な成立そのものが、なかなか先の見えない状況にあるようだ。
新規参入については、ソフトバンクの電撃的なボーダフォンの買収により変化の妙味は薄れたと言っても過言ではない。結果として旧来の三大キャリアに新たに加わるのは、イー・モバイルとアイピーモバイルの2社となった。しかも、アイピーモバイルはデータ通信オンリーの事業展開であることを当初より表明しているのだ。
また、非常に残念ではあるが、ボーダフォンの事業基盤をそのまま引き継ぐソフトバンクを除く新規参入組である2社は、ローンチが遅れている様子で、そのビジネスの実態は未だ計り難い状況だ。そのため、コンテンツプロバイダー側からは新規参入によるビジネス機会の創出は実感として感じられていない。
しかし実質の新規とは云えないながらも、ソフトバンクのその「予想外」な新たな行動が、ドコモやKDDI(au)に脅威を与え危機感をもたらしているとすれば、そこから生まれる価格やサービスの競争がユーザーにとってプラスに働くことも起きてはいるだろう。ただ、現状の複雑なサービス内容では、選択する側であるユーザーの混乱が深まるばかりだという意見もある。
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