番号ポータビリティやMVNO--新たな潮流がモバイル業界に与えた影響とは - (page 3)

木村潤(モバイル・コンテンツ・フォーラム)2006年12月06日 16時54分

2007年以降の通信業界の展開

 最後に、変革の年となる2006年以降の移動体通信の展開について少々触れてみたい。

 まずは、「端末機器の多種多様化」が再び始まろうとしているということだ。一時期は、ある程度似た様なデザインと機能、性能に収束していた感のある国内携帯電話市場だが、これからはニーズにマッチした、いろいろなタイプの機種が出現すると考えられる。MVNO向けやビジネス市場向けの専用機についても開発や販売競争は激化するかも知れない。低ロットでの収益性の確保が課題となるが、ハードもソフトも今まで以上に多様化の時代の到来となると予想される。

 また、「分かりにくい料金体系」や「複雑なサービス内容」の時代は終わろうとしている。一足飛びには切り替わらないかも知れないが、通信の高速化に加えて「分かり易く」かつ「定額」もしくは「低額」の料金プランが求められていることは確かだ。今回のMNPにともなう混乱が、ユーザーに改めてこのニーズの大事さを認識させたとすれば、今後はそこへ向けて努力するキャリアに加入者獲得の軍配は上がる。ユーザーの側も、キャリア側からのアプローチに翻弄されるのではなく、利用目的を良く考えた上での選択が必要となる。

 公式サイト系のビジネスについては、一部の有力コンテンツや超ニッチコンテンツ、独占的・排他的配信権利を有するものを除いて淘汰が進むだろう。この際、マルチキャリアにサービスを展開していて、どこのキャリアにおいても同じようにコンテンツ提供が可能なコンテンツプロバイダーが圧倒的に有利となることは容易に想像がつく。

 しかしそれ以上に重要な動向としては、「市場のオープン化」だ。各種の検索ツールやサービスをはじめとするMobile2.0の普及などで、オープン市場(いわゆる勝手サイトの市場)の拡大がますます盛んになり、コンテンツやサービスの提供者側にも利用者側にも、加入しているキャリアに影響されなくなる状況がより顕著になるということだ。

 ユーザーにとっては、コンテンツやサービスの利用料金がほとんどの場合で無料なことが大きな魅力となる。またコンテンツプロバイダーは、広告モデルだけではないビジネスの新たな可能性が、さらに大きくなってくると思われる。

 また、MNPやMVNOの影響で今後に向けて非常に大きいと考えられるものは、ビジネス市場の拡大だ。当然ながら従来からも各キャリアとも法人向けの需要開拓は行ってきたわけだが、現在の純然たる法人契約数は1000万契約程度のようだ。実際には相当数の個人契約の携帯電話がビジネスにそのまま利用されていると思われ、別途に法人(会社)契約をしていても、混在されて流用されている場合がほとんどとなっている。しかし管理や運用上、特に機密漏洩や顧客情報の紛失といったセキュリティの面で、現状では大きな問題がある。

 そこで会社単位で契約先キャリアを一本化し、携帯端末を一括購入することが、業務やコストの改善とセキュリティの確保に大きく貢献することは間違いないし、自社の業務目的に最適な端末とソリューションやサービス内容の選択が可能となるはずだ。1社もしくは数社でまとまってMVNOを利用すれば、購入台数が増大すれば特定のビジネスに合わせた端末仕様への変更も可能となる。現状の活発でない状況はともかく、今後、数千万加入者(社)の純増が見込める最大級のマーケットとして、大変有望なビジネス市場への足がかりとなる制度や仕組みが、MNPとMVNOなのだ。

木村潤氏
モバイル・コンテンツ・フォーラム事務局参与
木村潤

大手電機メーカーにてOA機器の販売、システムインテングレーション関連の営業・営業企画に携わった後、出版社で電子出版事業を経験、その後、1994年よりタイトーにて、ネットワーク、デジタルコンテンツ事業に携わる。家庭向け通信カラオケ及びマルチメディア事業の販売推進責任者や事業企画の責任者を経て、1999年後半より携帯電話向けコンテンツの営業責任者となる。2001年より同営業部長、2004年以降、モバイルソリューション事業の部門長などを歴任した後、(株)タイトーを離れて2005年12月にMCF参与に就任。本年4月からはモバイルマーケティングソリューション協議会(MMSA)事務局長を兼任し、現在に至る。

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