IBMは米国時間11月7日、ビデオを分析し侵入者や特定のナンバープレート番号までも探し出す、新しい監視システム「Smart Surveillance System」(S3)を、メインストリーム市場に提供する準備が整ったと発表した。
同社のデジタルビデオ監視サービスと連動するS3は、デジタル録画されIPネットワークを通じて蓄積されるビデオをリアルタイムで分析できる。また、記録されているビデオがオンラインにあろうとオフラインにあろうと、指定の特徴をさかのぼって検索できる。
IBMはセキュリティ分野の顧客をとくにあげてはいないが、IBM Researchでセキュリティおよびプライバシー担当の最高技術責任者(CTO)を務めるCharles Palmer氏によると、複数の政府機関、法執行機関、空港、および企業でこのシステムはすでに使用されているという。
「(S3は)『HAL9000』(のようなSF的なシステム)ではない。顔のすべてを認識できるわけではないし、色の違いを見分ける以外、車種の認識もできない」とPalmer氏は語る。「これを使う理由には、かなりたわいないものもある。たとえば、ある小売り店が使いたいと思ったのは、駐車場の空きを知るためだった」
実地テストでは、食料品店のセルフチェックアウトシステムで、果物の種類と価格を識別するためにS3が利用された例もあった。
とはいえIBMは、米国とメキシコの国境の各所でS3を使用する可能性についても話し合いをしている。
IBMのS3システムでは、リアルタイムで指定したものを発見しインデックス化する高性能のソフトウェアと、監視ビデオとを結びつける。記録されたビデオクリップに属性ベースの検索をかけ、特定のものや行動を探し出す。また、対象となるものが画面に現れたら警報が鳴るように設定することもできる。
これは、サンフランシスコの3VR Securityが開発した監視ソフトウェアと似通っているが、S3では、ナンバープレートの識別プラグインのようなほかの認識ソフトウェアを統合する機能が追加されている。
ある例では、店舗の入り口を入るときは包みを持っていなかったのに、包みを持って返品デスクにやってくる客を特定するのに、S3が利用された。
また、S3を使えば、特定の区域に入ってきたものの経路を逆にたどることもできる。たとえば、空港の駐機場のビデオと連動して、画面上の特定区域を電子的な線で囲い、その監視区域内に侵入したものがどういう経路で入ってきたかをさかのぼって追跡することができる。Palmer氏によると、監視区域に入った歩行者が所定の入り口を通っていなかった場合には警報を鳴らすといった、ルールの設定も可能だという。
プライバシーに関する懸念に対処するため、S3は人の顔やナンバープレートといったものをブラックボックスやぼかしで編集することができると、Palmer氏は述べた。編集は映像がIPネットワークで送信されて保存される過程で行われるが、編集をするかどうかは監視を実施する側の要請によって決められる。編集が行われた後は、映像を編集前の状態に戻せるのは、その権限を持つ有資格者だけとなる。Palmer氏によれば、何らかの事件が起きて、特定の時間帯を検索しなければならないような場合がこれに該当するということだ。
ただし、オフラインで保存されるデータについては、編集機能が使われる可能性はほとんどないだろうとPalmer氏は話す。
S3の利用法は人間を監視するだけではない。動物も追跡できる。実地テスト期間にIBM Researchがある団体から受けた依頼は、特定区域にヘラジカが移動してきた場合に探知できるシステムをS3で作ることだった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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