アナリストは「あり得ないとは言えない」と言うものの、打倒iPodを目指す企業の前にあるのは、険しい登り坂だ。米国デジタル音楽プレーヤー市場で70%のシェアを持つとも言われるAppleは、常に優れた製品をデザインしてきたことに加えて、巧みなマーケティング、品質管理、スムーズな流通体制の確保などにも抜かりがなかった、とAmerican Technology ResearchのアナリストShaw Wu氏は分析する。
これまでのところ、iPodに匹敵するモデルの出荷にこぎつけた企業はまだない。音楽プレーヤー市場の残りのシェア獲得は、SanDisk、Creative、ソニー、その他のメーカーのプレーヤーによって争われているが、これらは音楽コレクションの管理をMicrosoftまたはReal Networksのソフトウェアに頼っている。そして、これらのハードウェアとソフトウェアの組み合わせがiTunes-iPodという強力なペアと同じ人気を勝ち取るには至っていない。Appleの取り組みに対抗できるリソースとコネクションを持つソニーとMicrosoftでさえ、今のところコンシューマーに広く受け入れられる製品は提供していない。
Current AnalysisのアナリストSamir Bhavnani氏は、Appleがライバルの脅威にさらされるのは、デジタル音楽プラットフォームとして携帯電話が浸透したときかもしれないと語る。Appleは、Motorolaと連携してiTunes対応携帯「ROKR」によって携帯電話市場への参入を試みたが、そのデザインにコンシューマーの関心は低かった。それよりも、Appleが独自に電話機の開発を進めているという根強い噂があり、その機種では通話や文字メッセージのやりとりの合間に音楽を聴くことができるといわれている。
しかし、言うまでもなく、テクノロジは、iPodストーリーの一部でしかない。肝心なのは、Appleが携帯音楽プレーヤー市場を活気づけ、新しもの好きの人々に、かつてのようにヘッドフォンをつけて気軽に歩き回れる喜びを与えたことだ、とWu氏は話す。
「この5年間、黒のシルエットにしなやかで真っ白いイヤフォンというAppleのユニークな広告は、印刷物、テレビコマーシャル、屋外ディスプレイなどで、いやでも目に入ってきた。そして、余計なものをすべて排するデザイン哲学と洗練されたユーザーインターフェースとスクロールホイールの融合によって、機械に詳しくない人でも簡単にデジタル音楽を楽しめるようになった」(Bhavnani氏)
Appleはクリスマス商戦に向けてiPodの主要3カテゴリの新しいデザインを発表すると見られ、年末に向けてこの人気音楽プレーヤーに対する需要は堅調である。一方Microsoftも「Zune」プレーヤーと音楽サービスの年内発売を目指しており、SanDiskやソニーなどの企業も引き続き自社デバイスの普及に取り組んでいる。
「とはいえ、Appleには米国以外での市場シェアと出荷数を拡大するチャンスがまだかなり残されている。他国でのシェアは米国ほど飛び抜けてはいないため、携帯音楽プレーヤーを取り巻く文化水準はこれからまだ開拓の余地がある」(Bajarin氏)
「Appleはサブスクリプションサービスを発表することで、さらなるユーザーを獲得できるだろう。他社は、デジタル音楽の「非購入レンタル(rent-not-buy)」モデルを試みているがほとんど成功していない。ただ、こうした戦略がうまくいかない理由の1つは、iPodとの連携がないことにある」とBhavnani氏は指摘する。Appleが独自のサブスクリプションモデルを立ち上げたら、多くのユーザーが毎月10ドルか15ドルを喜んで支払い、Appleの音楽ライブラリにアクセスするだろう。
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