10月30日、KLabから新しい携帯電話向けポータルサイト「qewi(キューィ)」が正式にリリースされた。日本中のブログから情報を収集し、現在流行しているトピックスを抽出、ランク付けした上でユーザーに提示する。ユーザーは検索をしなくても、多くのブロガーが面白いと感じているコンテンツを整理された状態で見られる。
qewiを企画し、サービスリリースに持ちこんだ中心人物のひとりが小林慶太氏(22歳)だ。慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の4年生ながら、KLabの社員として活動している。サービスを十二分な形で実現するために独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「中小ITベンチャー支援事業」に応募、その支援を受けるという行動力も見せる。
小林氏にqewiの開発経緯や、KLabでの活動などについて話を聞いた。そこには、新しいタイプの起業ルートとなり得る産学官連携の形が見える。
私がKLabが支援している、神奈川県湘南地域の大学生や大学院生による研究開発機関「湘南アドバンストラボ」の代表だからなんです。KLabが行っている産学官連携事業として「大学前ケータイラボ」という取り組みがあるんですが、その拠点のひとつが湘南アドバンストラボです。形態としては、KLabの中の一組織にあたりますね。だから、湘南アドバンストラボのメンバーは、KLab従業員という扱いになるんです。
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大学前ケータイラボとは、KLabが大学生や大学院生に資金等の支援をしながら、主に携帯電話関連のサイトやアプリケーション、技術の開発を推進していこうという試みだ。KLabの設立当初(設立時の名称はケイ・ラボラトリー)から行われている。大学のほど近くに拠点が置かれるため、「大学前」ケータイラボという名称が付いた。湘南アドバンストラボも、SFCキャンパスの最寄り駅である湘南台駅の近くにある。
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子会社と同じような形と考えて頂ければいいと思います。KLabには企画を出して折衝をし、予算をもらう。KLabの他の社員とも連携をしていきます。
ただ、湘南アドバンストラボは法人ではなく、KLabという会社から見ればあくまでも一組織となります。湘南アドバンストラボのメンバーとしては、支援をしてもらって面白いことをさせていただいているという感じですね。
1年半前、代表に就任するときの話です。湘南アドバンストラボの前身である「SFC前ラボ」のメンバーが、卒業などで全員抜けることになったんですよ。そこで、当時の代表から、「やってみないか」と誘われたんです。これが、大きなきっかけのひとつですね。
あと、日本の携帯電話市場は世界的に見ても特殊なんじゃないかという意識をずっと持っていました。ユーザー自らが携帯電話でブログなどのコンテンツを作っていき、自身の楽しみを増していくという面白い世界ですよね。この世界に挑戦してみたいなと考えたんです。そこで、携帯電話での事業の立ち上げ方を知るために、大学前ケータイラボに関わることに決めたんです。
この時は、メンバーを一から集めて、KLabにも相談しながら事業計画を立てて、新たに「やらせてください」とお願いしました。
ビートコミュニケーションやガイアックスなど、いわゆるベンチャー企業でインターン活動を重ねていましたね。
高校生までは、普通に会社に入って、勤め人になるんじゃないかと思っていました。転機になったのは、ビジネスプランコンテスト「KING」に出場したことです。ここで、審査員としていらっしゃっていた、当時は楽天の取締役副社長だった本城さん(本城愼之介氏、現職は横浜市東山田中学校校長)とお話ししたんです。
そのとき、「自分の考えたサービスを広めていくというのは面白そうだな、こういう道もあるんだな」と思ったんです。そして「自分はどこまでできるんだろう」って。それがベンチャーに関心を持つきっかけになりました。
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その後、小林氏はqewiのサービスを開発するべく、IPAの中小ITベンチャー支援事業に応募する。この制度は、優れたIT関連技術を持つ中小企業を選定した上で、ソフトウェアの商品化や事業化を支援するもの。資金のほか、運営面や技術面でのサポートを提供する。
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KLabに支援をいただきながら湘南アドバンストラボを運営しているわけですが、もともと外部にも一緒にやっていだだけそうなところを探していたんです。
「未踏ソフトウェア創造事業」に選ばれて助成金を受けている先輩から、IPAは支援体制がしっかりしているので、今回の案件の支援を仰いだらいいのではないかというアドバイスをもらいました。また、自分でもいくつかの支援制度を調べて比較した結果、IPAへの応募を決定したのです。
3月末に応募をして、書類審査を経て4月の中旬に面談を受けました。
いえ。こういう支援制度へ応募したのは、まったく初めてでしたから。応募書類を書くときも、何度も試行錯誤しました。書類審査に通ったと聞いたときは純粋に嬉しかったです。
面接にあたっては「qewiの面白さを伝えるためのプレゼンって、どうすればいいんだろう」と、やはりかなり考えました。本番はこの準備のおかげで、巧拙はともかく、精一杯伝えられたんじゃないかと思います。
プレゼンの後は、おとなしく待ってましたね。落ちたら仕方ないし、受かったらありがたいなと。ありがたいことに5月末、「通過しました」という電話をいただきました。
そこからは、とにかく提供するものがないと何もできないと考えて、4カ月くらいqewiの制作に注力していました。
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