FBIのRobert Mueller長官は米国時間10月17日、インターネットサービスプロバイダー(ISP)に対し、顧客のオンライン活動を記録するよう呼びかけた。この問題については、2007年にワシントンでプライバシーと法の執行をめぐり激しい議論が展開されることが予想される。
Mueller長官はボストンで開催されている国際警察長協会(International Association of Chiefs of Police:IACP)のカンファレンスで講演し、その中で「テロリストらは、チャットルームをうろついている凶暴な性犯罪者と同様に、インターネットの匿名性に隠れて計画を練っている」と語った。
Mueller長官は、「われわれがこれらの犯罪者を逮捕する前に、彼らの発見と将来の被害者の保護に役立つ記録をISPが無意識のうちに削除してしまっているケースが非常に多い」とした上で、「(国民の)プライバシー保護の正当な必要性と、警察による情報アクセスの明白な必要性のバランスを取らなくてはならない」と付け加えた。
IACPは同日、Mueller長官の講演前にISPへの顧客情報の記録の義務付けに関する決議を承認した。この問題については、これまでもBush政権の複数の関係者が、民間企業への顧客情報の記録の義務付けを求める発言をしてきた。例えば9月には、Alberto Gonzales司法長官が議会で、「これは国家の問題であり、連邦法の制定が必要だ」と発言した。今回、Mueller長官がIACPの会議で行った講演はそれらの発言に同調するものだ。
しかし、データ保持法案は大変論議の多い問題であるため、政治家らが再選運動のために議会を後にする前に同法案をすんなりと通過させる時間はなかった、と複数の司法省関係者が非公式に認めている。その代わり、この問題は2007年はじめに表面化すると見られ、ある民主党議員はすでに法制化を公約している。
法執行機関側は、ISPに連絡する前に顧客情報がISPの日常業務の一環としてすでに削除されていまっている場合が多いと主張するが、一方の業界関係者は、警察がぐずぐずせず、垂れ込み情報に迅速に対応すれば、調査が危険にさらされる状況は想像しがたい、と反論している。
データ保持法で何が義務付けられるのかも不明だ。ある案は、ISPだけでなくドメイン名を販売しているレジストラーにも記録保持を義務付けている。また、FBIや司法省の関係者が、業界関係者との私的な会合の中で、検索エンジンにもログの保存を義務付けるのが望ましいと発言した(この案については、AOLがそのような記録が警察の調査においていかに有用かを示したことから、警察からのさらなる支持が見込まれる。AOLは8月に65万人に上るユーザーのウェブ検索データを公開し、多方面からの批判にさらされた)。
あるIACPの関係者は、決議案のコピーは開示できないと語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したも のです。海外CNET Networksの記事へ
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