クラリオン買収は日立株価復活のきっかけとなるのか

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 日立製作所は先週11日、自動車機器メーカーのクラリオンをTOB(株式公開買い付け)で買収すると発表した。クラリオンのカーナビゲーション技術と日立の情報・通信技術を融合し、電子化の進ちょくする自動車機器市場で事業の拡大を目指すことを目的としている。

 日立の古川一夫社長は以前から「効果があるM&Aは(企業の合併・買収)には積極的に取り組む」と発言してきたが、クラリオンは日立が筆頭株主とはいえ、保有株比率は14%で持分法適用会社ですらなく、同社にとってはTOBを使っての本格的なM&Aは初めてと言える。

 11日午前11時からの記者会見の席上で古川社長は「TOBにより、クラリオンの50%強の株式を取得して子会社化するが、上場、社名、ブランドとも現状を維持する。05年度の車載情報システム事業の売上高は両社合わせて2285億円だが、10年度には2900億円を目指す」としている。TOBの開始は25日からで、公開買い付け価格は1株=230円(10日の終値151円に対して52%ものプレミアを上乗せした価格)となっている。

 この日立の正式発表と、それに先行してこの日の日経新聞朝刊に掲載された「日立、クラリオン買収へ」の観測記事により、TOB価格の230円にサヤ寄せするかたちで当日のクラリオンの株価は朝から大量の買い物を集めて買い気配を切り上げる展開となり、大引けは結局前日比ストップ(50円)高比例配分の201円まで買い進まれ、出来高はわずか134万3000株で、なお4億株を上回る大量の売り物を残す結果となった。そして、翌日12日も、5524万株の大商いでTOB価格の230円まで上昇した。

 ところが、日立の株価は発表当日の11日も、出来高が前日に比べて減少傾向を示したばかりか、株価もほとんど無反応で終値は前日比1円安となった。これにつて外国証券の電機担当のアナリストは「日立は大手重電3社の中で企業規模ではトップにもかかわらず、事業の構造改革の立ち遅れによる業績不振から、昨年から今年にかけて株価の面でも三菱電機、東芝に相次いで抜かれる事態となっている。日立が第一に取り組まなければならないのは、2003年にIBMから買収したものの、急速な価格の低下で採算が悪化しているHDD事業の建て直しや、薄型テレビ、DVDプレーヤーなどデジタル家電事業での立ち遅れの回復などではないのか」としている。

 日立は2007年3月期の連結業績について、中部電力などで起きた同社製原発タービンの破損事故に伴う補修費用の計上などで550億円の最終赤字に転落する見通しと発表している。当然来期は、特殊要因による特別損失がなくなり黒字転換が期待できるものの、その場合でも純利益は最大でも700億円程度に止まるものと推定される。したがって、そこから試算した日立の株価は、来年3月の期末までの期間に限って考えると、最も楽観的なシナリオでも1000円台の回復が精一杯となりそうだ。

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