もちろん、後継者を育成できない場合もある。最近の例では、Hewlett-PackardとComputer Associatesがこのケースに相当する。Hewlett-PackardはCarly Fiorina氏が解任された後、数ヶ月を費やして、現CEOのMark Hurd氏を選任した。Computer Associates(CA)の場合は、CEOが詐欺罪で告発され有罪を認めたため社内の清浄化を図る必要があった。どちらのケースも、取締役たちは社外にCEOの候補を求めた。というのは、明確な後継者がいなかった上、困難な状況を打開するため新鮮なアプローチが必要だったからだ。「CAの場合は、数人の取締役も外部から同時に採用したことで、経営トップの文化を劇的に変えることに成功した」(Mader氏)
トップの交代をスムーズに進めるのは、会社創設当時から受け継がれてきた企業文化によるところが大きい、とペンシルベニア大学ウォートンビジネススクール教授David Hsu氏は指摘する。「創設者がトップの座を退いた後も消えることのない企業文化をすり込むには、会社創設時期に行われた決定が重要になる」(同氏)
この記事を執筆する際にいくつかの企業にコメントを求めたが、経営トップの交代を比較的最近実施したIntel、Sun、Microsoft、およびCEOの退任時期を公にしていないAppleやOracleなどからはコメントを拒否された。
これは驚くにはあたらない、とMader氏は言う。取締役たちは、「外部に社内の後継者育成の過程を知られるのを嫌う。後継者が決定した時点で発表すればよいと思っているからだ」(Mader氏)
後継CEOを公にするのを拒否しているAppleとOracleについては次の点を忘れないようにしたい。Jobs氏は1980年代半ば〜1990年代半ばまでAppleを離れていたが、その時期のAppleに戻ることを望んでいるMacユーザーは皆無に等しい。Ellison氏は、1990年代、CEOの職からは辞さなかったが、当時の社長Ray Lane氏に実業務の執行を任せていた。
もちろん、シリコンバレーで先導的な役割を果たしているこの2大企業を現在率いているのはJobs氏とEllison氏であることに疑いの余地はないが、この2社はどちらも、偉大なボスがいない時期を体験しているのである。
ただし、公正のために言っておくと、Appleの重役の中でJobsの公的イメージに近づいている者は誰もないが、Oracleでは必ずしもそうではない。共同社長の1人Charles Phillips氏(もう1人の共同社長は、最高財務責任者を兼任するSafra Catz氏)は、世界中の顧客と会い、多くのカンファレンスでもスピーチを行うなど、Oracleの公の顔になっている。これは彼がEllison氏の後継者であることを意味するのだろうか。これが一般に周知の事実であるかどうかは明らかではないが、少なくとも顧客はPhillips氏のことを知っている。
「これは良いことだ。会社の将来について十分な計画を立てることができないと大企業といえども危機に瀕する可能性がある」とMader氏は言う。
「こと後継者育成に関しては、どの会社も本来持っていて然るべき力を備えていない」(Mader氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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