秘密のベールに包まれたアップルの「iTV」--リビングルーム進出の起爆剤になるか

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2006年09月13日 12時36分

 米国時間9月12日のイベントで新しいネットワーク関連製品が披露されたことにより、Apple Computerのリビングルーム戦略に関する考え方が少しだけ見えてきた。

 Appleはこれまでの伝統を破り、製品を販売する数カ月前に発表を行った。Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏は、同社がiTVというコードネームを持つ製品を開発中であることを発表した。この製品はMacユーザーとPCユーザーの双方が、iTuneストアで購入した映画やテレビ番組をリビングルームで視聴できるようにするもの。

 Appleの動向をよく知る人々は、この秘密主義で知られている企業が、今回のように事前に製品を発表したことは記憶にないとしている。iTVは2007年の第1四半期になるまで市販されないが、Jobs氏はこの製品の価格は299ドルになると述べ、サンフランシスコで開かれたAppleの報道機関向けのイベントで、その機能について短いデモンストレーションをして見せた。

 iTVは基本的にテレビに接続するための映像接続端子を持つ無線ルータで、デジタル高精細テレビに接続するためのHDMI端子も備えている。この製品の考え方は、これをテレビやセットトップボックスへの入力機器の1つとし、Appleの専用リモコンを使ってMacやPCに蓄えられているビデオコンテンツにアクセスさせようというものだ、とJobs氏は語った。

 このような機器は、Linksysなどのネットワーク関連企業から数年前から提供されているが、その複雑さから、消費者にはあまり人気がない。その理由の1つには、Movielinkなどの企業が提供するサービスがうまく行っておらず、PCに多くの映像を蓄積している人が多くないことも挙げられる。しかし、Appleは一般消費者が、デジタル音楽を楽しむ状況が整ったのと同じように、デジタル映像を楽しむ状況が整ってきたと考えている。

 Jobs氏は同社のデジタルメディア戦略を説明し、「この製品によって1つの物語が完結し、われわれがどこへ向かっているかを示すことになるだろう」と語った。

 もっとも、12日のイベントではiTVに関して明らかにされなかった情報も多い。マーケティング担当シニアバイスプレジデントのPhil Schiller氏は、iTVに搭載されるワイヤレスチップの種類についてコメントを控えている。またJobs氏も、802.11規格のうちのどれかをサポートすると述べるにとどまり、Wi-Fi Allianceが802.11n対応機器の認証を始めるのを待つのか、それとも、速度の劣る802.11gをサポートするのかについても明らかにしていない。

 Piper JaffrayのアナリストGene Munster氏は、Appleが年末商戦に間に合うように製品を投入しないのは意外だと述べる。ただし、AppleがiPodのおかげで音楽ダウンロードサービス市場を独占することに成功したように、この製品はAppleがビデオダウンロード市場で一定の地位を築く過程で助けになるだろうと、同氏は付け加えた。

 「Appleが音楽市場で成功したのは、他の機器とシームレスに連係し、たくさんのコンテンツを詰め込めるデバイスをユーザーに提供したからだ。彼らはまったく同じアプローチでリビングルームへの進出に挑もうとしている」(Munster氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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