ブロードバンド推進協議会のオンラインゲーム専門部会は7月21日、東京大学において第9回研究会を開催した。Web 2.0に代表されるウェブコンテンツ新時代の到来を踏まえ、韓国コンテンツ経営研究所代表でソウル中央大学助教授である魏晶玄氏と、駒澤大学助教授の山口浩氏が学術的見地からオンラインゲームの未来像について語った。
まずは山口氏が「ウェブサービスとしてのオンラインゲーム」と題して講演した。オンラインゲームはもはや単なる娯楽ではないとして、違う視点から捉えることで未来像を考えるというものだ。山口氏は、オンラインゲームを「ゲーム」「コンピュータソフトウェア」「デジタルコンテンツ」「コンピュータネットワーク」「ウェブサービス」といったさまざまな視点から解析し、オンラインゲームには社会やコミュニティ、メディア、文化などの側面があると述べた。
また、Web 2.0時代を見据えた際、「チープ革命」「総表現社会」「マス・コラボレーション」という3つのキーワードが重要になってくるとした。チープ革命は、技術の急速な進化がもたらす価格の破壊的低下により、これまでできなかったことが可能になったり、これまで考えられなかったことを考えられるようになったりするというもの。インターネットの普及によって情報量が飛躍的に増加し、高度な処理を低価格でできるようにコスト構造が変化し、産業の構造も変わっていく。
チープ革命により、オンラインゲーム業界ではユーザーがゲームに支払う平均金額が下がることが考えられる。これに対してゲーム企業は、
といった対応が必要になってくると述べた。
このような観点から捉えると、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが進めているポータル化はひとつの流れであり、ポイントシステムの導入やゲーム内での映像や音楽の配信、ゲームポータルから出前の注文ができるようにするなどの施策は、オンラインならでの機能を重視した明確な戦略であるとした。また、マイクロソフトがゲーム内広告配信企業を買収したことも、オンラインゲームをメディアとして捉えていることがうかがえるという。また、今後は広告を見るという「労働」に対価が支払われるような仕組みが重要になるとも話した。
総表現社会は、多くの人がブログやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、コンテンツ共有サイトなどで自らを表現する社会であり、これは企業、顧客の双方にメリットがある。オンラインゲームに当てはめた場合、自己表現の方法としてはアバターの外見やアイテムのデザインの変更、コミュニティにおける交流などが挙げられる。オンラインゲームをもうひとつの人生と捉えれば、ユーザーがアイテムを作り出せる機能や、そのアイテムを知的財産として承認するような仕組み、定期的なメジャーバージョンアップでなく継続的なバージョンアップなどが必要になる。
また、総表現社会ではユーザーに表現の場を提供することになる。ユーザーはこのような場所からはなかなか離れないため、ゲーム企業にとっては顧客の囲い込みができ、大きなメリットになる。
マス・コラボレーションは、GoogleのPageRankやWikipediaのように、多数の人々の自発的参加が競争力の源泉となるものを指す。つまり、他人の存在がユーザーのメリットになるということだ。このため、ユーザー数を増やすことは、企業がコストをかけても実現すべきこととなる。このため、たとえば企業側がコストを負担してユーザーに場を無料開放することも必要になるという。
Web 2.0時代のオンラインゲームの可能性として、山口氏は「生活の場、ビジネスの場、労働の場としてのゲーム」という考え方を示した。そこでは、運営者とプレーヤー以外のスタッフがオンラインゲームに存在し、ゲームに参加することが仕事になる。たとえば、プレーヤーが倒すべきモンスターを操るスタッフがいるといった具合だ。オンラインゲームには、社会訓練や雇用の機会を提供できる可能性があり、自宅にいながら就業できる「娯楽施設」になり得るという。
さらに視点を広げると、仮想コミュニティにおける合意形成が可能なことから、現実の政治や社会活動の場としてオンラインゲームを利用するという可能性もあるという。ただし、この場合には独自の規範や文化、提供される部分とユーザーが作る部分の切り分け、既存のルールで縛ることを最小限にするなどの工夫が必要だと述べた。そして、これらの一部はすでに始まっていて、オンラインゲームが及ぼす社会的影響力は、すでにゲームの範疇を超えていると締めくくった。
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