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望まれるDRMの形とは?--iTunes DRM公開法でフランスが残した教訓

文:Tom Jacobs 翻訳校正:吉井美有2006年07月26日 23時16分
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 フランスでは最近、オンラインミュージックサービスでダウンロードされる楽曲はどのMP3プレーヤーでも再生可能であるべきだという厳重な互換性を求める法案が提出された。しかし、まるでフランスの典型的なラブストーリーのように、一見うまくいきそうだったこの提案も、さまざまな問題点が浮上し、あちこちでしこりを残すことになってしまった。

 すべては、数ヶ月前に、フランス下院をある法案が通過したことから始まった。この法案は、簡単に言うと、フランスのiTunes Music Store(iTMS)で購入した楽曲をすべてのMP3プレーヤー上で再生可能にすることを要求するものだった。

 現状では、たとえば、お気に入りのSerge Gainsbourgの曲をiTunesで購入しても、再生するにはiPod、iTunes、またはiTunesで作成したCDが必要だ。これでは、MP3プレーヤー内蔵の携帯電話を購入しても、iTunesでダウンロードした楽曲は再生できない。万が一、iPodの人気がなくなり世の中から消えてしまうようなことがあれば、購入したGainsbourgの曲は永遠に聞くことができなくなってしまう。フランスの議員や消費者グループはこの現状を変えるため、法制化を求めたのである。

 この法案はすべてのオンラインミュージックストアに影響を与えるものだったが、Apple Computerが市場で圧倒的なシェアを確保していることから、明らかに同社が標的となった。Appleは、このような法案に従うくらいならフランスのiTMSの閉鎖も辞さないと反発した

 激しい議論の末、法案の内容は大幅に修正され、7月7日に可決された案では、オンラインミュージックストアに楽曲を提供するレコード会社やアーティストが了承すれば、ダウンロード楽曲の互換性保証義務に従わなくてもよいことになった。最終的にはフランスの官僚が仲介役となり、調停案が作成されることになるだろう。

 Appleは、修正案についても、その言い回しに依然として不満を持っており、場合によってはフランス市場から撤退する可能性もある。撤退まではないとしても、そうした厳格な互換性を要求する楽曲をiTMSの仮想陳列棚の奥のほうに追いやってしまうことになるだろう。結局は、この法律によって、国が後押しする形で、レコード会社、オンラインミュージックストア、官僚の三つ巴の勢力争いが繰り広げられることになりそうだ。いずれにせよ、Gainsburgの「Les Incorruptibles」を携帯電話で聞けるようには多分ならないだろう。

 「ちょっと待ってくれ」という声が聞こえてくる。こんなことでいいはずはない。

 まず、技術的に変化の激しい分野を法制化しても厳密なところまで規定できず、すぐに時代遅れになってしまうことは目に見えている。たとえ今は圧倒的なシェアを誇る製品であっても、何年か先には消えゆく運命にあるかもしれない。1990年代に栄華を極めていたCompuServeやAOLなどのパソコン通信サービスが今どうなっているか見れば分かる。

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