7月19日から東京ビッグサイトで開催されている、通信関係では日本最大規模の展示会「WIRELESS JAPAN 2006」。Qualcommが事業化を進めている「MediaFLO」について、クアルコムジャパン ビジネス開発マネージャーの小菅裕之氏が講演した。
MediaFLOは、6MHzの周波数帯域を使用し、ストリーミングコンテンツや「蓄積型クリップキャスト」と呼ばれるダウンロード型コンテンツ、音楽、データ通信などを載せる放送型サービス。FLOは「Forward Link Only」の略で、通信ではなく局から送られてくる放送型のサービスであることを打ち出している。最大でストリーミング放送が20チャネル、蓄積型クリップキャストならば40チャネルを同時に送信可能だ。課金などのデータについては、携帯電話のネットワークを経由してやり取りする。
携帯電話でTVを見るというと、ワンセグとどこが違うのかと思うだろう。実際、見た目ではさほど違いはない。だが、ワンセグが当面は無料で地上波デジタルと同じ内容を送信する、TV放送の携帯電話版であるのに対し、MediaFLOは当初から課金ベースであり、多チャネルでダウンロードが可能であるなど、CATVやCSに近いサービスを目指している。
米国ではQualcommが事業主体となって、2006年10月からのサービス開始を目指している。周波数は716〜722MHzをオークションにて入手済みであり、Qualcommが各地に放送用鉄塔を立て、最大50KWという大電力で放送する。鉄塔がTV放送用並みに高いこと、電波が大出力であることから米国全土を網羅するのに300から400基の基地局を用意すればよいという。
サービスコンテンツやアプリケーションについては2005年7月にFLO Forumを設立して、標準化を進めている。FLO Forumには2006年6月時点で46社が加入しており、メンバーにはKDDI、京セラ、シャープ、三洋電機といった日本企業も参画している。小菅氏は「標準化によって日本企業の海外進出をうながし、(チップセットの)ロット数を増やすことで低価格化を実現したい」と述べた。
日本では、クアルコムジャパンとKDDI、ソフトバンクなどが事業化に向けた企画会社を設立している。しかし、周波数が割り当てられるのかどうかといった点から、未知数の部分は大きい。
TV動画配信という点で、どうしてもMediaFLOはワンセグのライバルとみなされがちだ。これに対し、2007年初頭にリリースが予定されている第2世代のFLOチップセットでは、ワンセグにも対応する。ワンチップでMediaFLOとワンセグを統合することでコストダウンを実現し、両者の共存と棲み分けを目指すという。また、小菅氏は既存のキャリアやコンテンツプロバイダなどの枠組みを壊さず、ユーザーの選択肢を広げるという方向をとっていることを強調した。
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