常に進化を続けるベンチャー企業にとって、新規事業の展開や企業としての方向転換は、いつ起こっても不思議ではない。こうした変化に対し、経営者や社員はどう対応していくのか。「転換期のマネジメント」と題したNew Industry Leaders Summit(NILS)のセッションでは、モデレーターを務めたグロービス・キャピタル・パートナーズのパートナー 仮屋薗聡一氏が、転換期を経験した3社の代表を招き、それぞれの体験や悩みについて聞いた。
同セッションのスピーカーとして登壇したのは、ディー・エヌ・エー(DeNA) 取締役 次世代戦略室長の川田尚吾氏、ネットプライス 代表取締役社長 兼 CEOの佐藤輝英氏、グリー 代表取締役社長の田中良和氏だ。各スピーカーは、どのような転換期を体験し、新事業をいかにして推進してきたのか。
ネットプライスの佐藤氏は、「わが社にとっての一番大きな転換期は2001年だった」と話す。当時同社が手がけていた事業は、オンラインモールの「ネットプライスモール」と共同購入事業の「ギャザリング」だ。両事業を合わせた月商約1憶円のうち、モールが約9割、ギャザリングが約1割を占めていた。ただ、「成長率から見ると、モールよりもギャザリングが大幅に伸びていた。モールはすでに楽天が独走状態で、われわれはそれを追いかけるので精一杯だった」と佐藤氏。そこで同社は、2001年にモール事業を売却する決断を下した。
ネットプライスにとってビジネスの9割を占めていた分野からの撤退となると、当然リスクもあるが、佐藤氏は「伸びない事業は早めに辞めた方がいいと感じていた。株主の理解もあったのはラッキーだった」という。
一方、DeNAの川田氏によると、同社の転換期は2001年の事業拡大にあったようだ。1999年にオークションサイト「ビッダーズ」を立ち上げた同社だったが、すでにオークション事業ではヤフーが先行していたことに加え、収益源は成約手数料のみとなっており黒字化は厳しい状況だった。そこで2001年、同社はオークション事業に加えてショッピング事業にも参入した。
しかし、「ショッピング事業は、オークションとは全くビジネスカルチャーが違った」と川田氏は明かす。ショッピング事業の場合、オークションのように場を提供するだけで出店者が集まるわけではない。ショップに出店してもらうための強い営業力が必要となるわけだ。そこでDeNAは営業力を強化するための組織作りに注力した。この転換によって、同社は2002年末には月次で黒字を達成することが可能となった。
DeNAの2つ目の転換期は2004年だ。この年、同社は携帯電話向けオークションサイト「モバオク」を開始する。ほとんどの携帯電話がカメラ搭載機となり、写真を撮ったその場ですぐに出品できるという手軽さから、この事業は一気に成長し、「今ではPC向けオークションサイトの取扱高を上回る」と川田氏はいう。
このようにすでに何度か転換期を通過した2社とは違い、2004年12月に創業したばかりのグリー 田中氏はまだ大きな転換期は体験していない。しかし「そろそろわが社も転換期にさしかかっている」と同氏はいう。現在グリーの事業は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「GREE」の運営が主体となっているが、ネットプライスやDeNAがそうであったように「会社というものは、生まれ変わりつつ成長していくものだと実感している。いつも次の一手を考えておかなくては」と田中氏は話す。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス