通常どの企業でも通過する事業の転換期は、「作る」事業から「売る」事業への転換だ。つまり、サービスや製品を提供するにあたって、まずその仕組みや製品を「作る」ことから始めなくてはならないためだ。
「作ることから売ることへの体制の転換がうまくできない企業は多い」とDeNAの川田氏は指摘する。川田氏の場合、DeNAの立ち上げ当初は開発も含めたサービス立ち上げの責任者として仕組み作りをすべて担っていたが、企業が売る体制への転換を図った時、突然営業部長に就任することとなった。会社の方向転換と共に自身の職種も変わったため、当然苦労もあったが、「制作部隊と営業の間で衝突が起こっても、私はもともと作る側だったので、昔から一緒に作った仲間として作り手との一体感を保つことができ、うまくいった」という。
ネットプライスの場合は、売ることへの転換期に「まずはひとつでもいいので成功例を作ることに注力した」と佐藤氏。その成功例を社内にアピールすることで、社員のやる気も向上するためだ。「良い例があれば、それがうまく循環する」と佐藤氏はいう。
グリーの田中氏は、同社を起業する以前は楽天の社員だった。営業力があるとされている楽天では、「目標設定や数値管理が徹底していた」と田中氏は話す。数字が目の前にあることで、確実に売り上げが伸びていったという。ただし、同時に田中氏は「数字にこだわりすぎると新しいものは生まれにくい」と警告もしている。
常に新しい事業にチャレンジすることは、企業が成長するために欠かせないことだが、新規事業の立ち上げには生みの苦しみも伴うものだ。新規事業を始めるにはどうすればいいのだろうか。
グリーの田中氏は、新規事業の展開について悩むことも多いと明かす。Googleが、仕事時間の2割は仕事と全く関係のない新しいことを考えるための時間としていることは有名だが、こうした取り組みは重要だとしつつも、「社員に対し、2割は遊んでくれというのもどうかと考えてしまう。また、いいアイデアが出た場合も、会社としてその事業を本格的に展開するかどうかをいかにして決定するかも難しい」と述べた。
こうした田中氏の悩みに対し、DeNAの川田氏は、「結局はその事業に対し、“死ぬほどやりたい!”という意気込みを持った人がいないと成功しないだろう」と話す。DeNAでは、「会社としてその事業を推進するかどうかという判断より、その事業に本気で取り組みたい人がいるかどうかが判断基準だ」と川田氏は説明した。
ネットプライスの佐藤氏も、「わくわくしてやれるかどうかは必要条件だ」と述べつつも、最終的な決定はトップダウン形式が多いと話す。「社長がやると決めたことはやる、と決めておくのも悪くないのではないか」というのが佐藤氏の意見だ。
ただし、ネットプライスでも社員の意見を受け入れないわけではない。同社でよく実施する会議に「ノーと言わない会議」がある。佐藤氏は、「ネガティブな発言があると、議論が止まってしまうため、こうした形式の会議を実施している。あるアイデアが出て、実行するかどうかを考えるとき、実行しない方がいいという理由があるのと同じくらい実行すべき理由もたくさんある。実行することを前提として議論するのが“ノーと言わない会議”だ」と説明する。
グリーの田中氏も、自身がSNSの提供を始めたのが、まだSNSがビジネスになるとは誰も考えなかった頃だったということもあり、「当たるか当たらないかわからないが、社員のアイデアは否定しないようにしている」という。
ネットプライスの佐藤氏は、「特に25歳以下の若い人材に可能性を感じる」と話す。若い世代は、子供の頃からインターネットを使っており、成人になってからインターネットに触れた世代とは大きな開きがある。「ドッグイヤーでいえば30年ほどの開きがあるのではないか。こうした若い人材から生まれてくるアイデアに期待している」と佐藤氏。田中氏も、「インターンの中には、中学生の頃からモバイルサイトで広告を販売していた学生もいる。29歳の私と職歴がほとんど変わらない」と述べ、若い世代の威力を実感しているとした。
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