しかし、専門家によれば、シリコンはソーラーパネルにとって理想的な素材ではないという。これは太陽電池のメーカーでさえ認めている。シリコン製のソーラーパネルは、理論的にはパネルにあたる太陽光の最大約30%を電力に変換できる。しかし、実際のところ、市販の太陽電池は太陽光の10%から20%ほどしか電力に変換できていない。
また、シリコンパネルの生産コストは依然として高い。Sharp Electronicsでソーラーシステムのゼネラルマネージャーを務めるRon Kenedi氏によると、太陽光から1キロワットの電力を生成するのにかかるコストはおよそ35セントになるが、通常の電力網から得られる電力は1キロワットあたり25セントだという。日本、ヨーロッパ、それに米国の政府が、ソーラーシステムの設置費用を補助しているのはこのためだ。
NanosolarやHeiloVoltなどの薄膜太陽電池のメーカーは、電力の生産効率はシリコンパネルと変わらないと言う。違いは、薄膜太陽電池は柔軟なフィルムシートにプリントすることによって、コストを劇的に削減できるという点にある。さらに、薄いシート状だということ自体が利点になるのだ。薄いシートだからこそ、様々な種類の面に貼り付けることができるし、屋根のタイルや建物の窓ガラスに直接組み込むことも可能となるからだ。
これまでは薄膜タイプの太陽電池で成功したものはないが、CIGS系薄膜を支持する人々は、これまでのものより耐久性に優れていると主張する。CIGSの可能性には、Shellのような大企業も関心を持ち始めている。しかし、シリコン系の太陽電池メーカー側はこの動きに異を唱えており、数カ月前からにわかに、シリコン陣営とCIGS陣営の間で激しい競争が始まっている。
Mohr Davidow VenturesのパートナーであるErik Straser氏は、「薄膜にプリントするこの太陽電池は、規模が大きくなるにつれて経済効率がよくなるだろう」と言う。
Roscheisen氏によれば、Nanosolarは現在はまだパイロット施設で製造している段階だが、2007年には新たな工場を建設して太陽電池セルの製造を開始する予定だという。Roscheisen氏は、2001年に数社のインターネット企業をすべて売却してNanosolarを起こした。新工場は最終的には年間430メガワットの電力を生産することになるが、初期段階ではそこまでの能力はないという。だが、まず製品として世に出すのだと、Roscheisen氏は語った。(430メガワットという値の意味は、工場で年間に生産するすべての太陽電池を利用すれば、いちどきに430メガワットの電力を生産できるということだ)。
また、Straser氏によれば、Nanosolarは複数の顧客と供給契約を結び始めているという。この1年Nanosolarは、IBMと日立のハードディスクドライブ部門を担当していたWerner Dumanski氏など、製造担当の幹部を数名採用し始めている。これは、科学的実験段階を終え製品としての製造に取り組もうとするためのてこ入れと言えよう。
「多くが、ウィンドウコーティングの事業からスタートし、1980年代になってハードディスクドライブ分野に移った人々だ」とStraser氏は述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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