ライス大学教授で1996年にノーベル化学賞を受賞したRichard Smalleyは、 代替エネルギーの研究に膨大な規模の資金提供をするよう米国に呼びかけている。
米サンフランシスコ州で今週開催されている「International Electron Devices Meeting」でSmalleyは講演を行い、集まった科学者たちに対し「環境に悪影響を及ぼすことなく、地球上に住む100億もの人々がこれまで通りのライフスタイルを維持する・・・これは冷戦よりも難しい挑戦課題かもしれない」と語った。「この問題からは逃れられない。事態が最悪の方法に進めば、テロ、疫病、飢餓が蔓延するだろう」(Smalley)。
最近では多くの科学者や技術者が、今後20年間で石油や石炭、天然ガスの供給量が減少した場合の影響について研究している。カーボンナノチューブの研究で有名なSmalleyもその1人だ。同氏以外にも、ノーベル賞を受賞したStephen Chuが、エネルギー分野の研究を促進したいとして、スタンフォード大学を去り、Lawrence Berkeley National Laboratoryに移籍している。
また一方では、Mohr Davidow VenturesのErik Straserのように、太陽エネルギーや浄水システムなどの事業に力を入れる企業に投資を行うベンチャーキャピタリストが増えている。ShellやBPといった石油会社も代替エネルギーの研究をしている。
問題は、需要と供給のバランスが全く保たれていない点にある。世界の人口とエネルギー需要が増加しているのに対し、化石燃料の供給量は減る一方だ 。Smalleyによると、現在地球上に住む60億人が一日に消費するエネルギー量は14.5テラワットで、これは石油1億5000万バレルに相当する量だという。
国連のデータによると、2050年には世界人口が100億人に達し、エネルギー需要は1日当たり30テラワット〜60テラワット(石油4億5000万バレル〜9億バレル相当)に増加する見込みだという。しかし残念ながら、石油生産量は2020年のピークを境に減少する見込みだ。このまま行けば、途上国の人々は暗闇の中での生活を余儀なくされ、先進国の人々は自分たちの明かりを維持しようと苦闘することになるという。
まだ埋蔵されたまま利用されていない石炭資源もある。しかし、石炭を燃やせば二酸化炭素が発生する。現時点では、二酸化炭素の排出を抑える効果的な方法は確立されていない。風力、波動、地熱エネルギーはほぼ開発され尽くした状態だ。
Smalleyによると、最も有望な代替エネルギーは太陽エネルギーだという。毎日、約16万5000テラワット分のエネルギーが地球上に降り注いでいるからだ。Smalleyによると、Konarka TechnologiesやNanosysといった企業はすでに研究に乗り出しており、今後に期待できる研究内容になっているという。しかし、太陽エネルギーを本格的に利用しようと思ったら膨大な量の研究を行う必要があるのに、その資金が不足していると同氏は指摘する。
「深刻な病気が流行すると300億ドルもの資金が投入される。それに対し、エネルギー研究への投資は現在、数十億ドルにも満たない額だ」(Smalley)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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