シアトル発--依然として窮地に立たされてはいるものの、「Vistaの出荷は最後に発表したスケジュールにはまだ何とか間に合うという望みを持つだけの根拠がある」とJim Allchin氏は述べている。とはいえ、とても一息つけるような状態ではないようだ。
ここ数年、Windowsの新バージョンのリリースを統括してきたAllchin氏は、Vistaが出荷されたら引退するつもりでいる。あるインタビューで彼は、パフォーマンスやアプリケーション互換性の向上など、Vistaをリリースする前にまだ確認しておきたいことが山ほどあると語っている。
Microsoftは米国時間5月23日、Vistaのより広範なテストバージョンであるBeta 2をテスター向けにリリースした(編集部注:その後の6月7日には、Customer Preview Programの下一般ダウンロードを開始している)。「すべてが順調に進んでいるように思う。もっとも、わたしは日々、1日の大半を心配しながら過ごしているのだが」とAllchin氏は言う。「多くの人にBeta 2を使ってもらえるようになったのは、非常に大きな前進だと思う」(同氏)
Vistaは数回にわたって発売が延期されている。最も最近の延期は3月に発表されている。そのときMicrosoftは、Vistaの投入が2006年の年末商戦には間に合わないだろうと発表した。市場調査会社Gartnerは、2007年1月の出荷も難しいとの予測を既に発表している。Microsoftは公式にはあくまで1月の出荷を目標にすると言い続けているが、5月23日にBeta 2を発表したとき、Bill Gates氏は具体的な出荷月までは言及しなかった。一方、CEOのSteve Ballmer氏も、5月24日の東京での記者会見で出荷時期に関して明言を避けた。
IDG News Serviceによると、Ballmer氏は「2007年の初めには出荷できると思う」と答えたという。「1月という話は確かにしたけれど、こうしてBeta2をリリースできたので、そこからあがってくるすべてのフィードバックを慎重に評価してから、決めたいと思う。その結果によって、予定通りに出荷する可能性もあれば、数週間遅れることもあり得る」(Ballmer氏)。
しかし、Allchin氏は楽観的だ。Microsoftのプラットフォームおよびサービス部門のコプレジデントである同氏に、Windows Hardware Engineering Conference (WinHEC)で、Vistaの現状、今後の展開、今回の一連のスケジュールの遅れから学んだことなどについて聞いた。
ええ、今のところそのつもりです。ベータからあがってくるフィードバックがどうなるかですね。引き続き取り組まなければ問題があることは認識しています。XPからのアップグレード、パフォーマンス、アプリケーションの互換性、アップデートするかどうかを尋ねるダイアログ ボックスなどです。これらはすべて優先度の高い問題で、すでに取り組みを開始しているものもあれば、次のテストバージョンで対応するものもあります。また、もう少しフィードバックが必要な問題もあります。順調に進んでいると思っています。
非常に高いレベルにあるといってよいと思います。つまり、今回のベータリリースを見てみると、確かに問題となりそうなケースはいくつかあるでしょうし、アプリケーション互換性の問題もありますが、コア部分のコードの品質という点では、非常に高いレベルにあります。ですから、後は対処療法的に問題に取り組むだけです。パフォーマンスやアプリケーションの互換性の問題、デバイスドライバの拡充など、やるべきことはたくさんあります。しかし、そうした問題は、見つけては直し、見つけては直し、を繰り返して解決するしかありません。もちろん、できるだけ早くやる必要はあることは認識しています。セキュリティ、安全性、パフォーマンスなどのバランスという点では問題ありません。
非常にうまくいきました。ベータをリリースする前にああいう方法でバグをつぶすのは良いことです。実際、いくつかバグが見つかりましたから。効果的でした。私はああいったこともベータテストの一部だと思っています。実際のベータ版はできるだけ多くのユーザーに試用してもらいたいと思います。今重要なことは、テスターの皆さんができるだけ早くフィードバックを返してくれることです。
ええ。残された時間はわずかです。しかし、今までのWindowsのリリースと大きく異なるのは、われわれにとって有利な材料がたくさんあることです。それに、発生した問題を自動的に吸い上げるために、これほど多くの仕組みが組み込まれたシステムも初めてです。デバイスを挿して、ドライバが見つからなければ、すぐに報告されます。アプリケーションが異常終了したときも同じです。こうした仕組みがシステムに組み込まれているのです。ユーザーの皆さんに、「デバイスドライバが見つからない」という報告をいちいちあげていただく必要はありません。そうした問題は発生した時点でわれわれに伝わるようになっています。ですから、不足しているドライバや問題のあるアプリケーションを整理することができます。フリーフォーマットでコメントを記入してもらえるようテキストボックスも用意しています。これはわれわれにとってありがたいのです。自動学習のような仕組みがあって、こうしたコメントを読み、問題点を自動的に突き止めることができますから。ユーザーの実行したことについて、これほど膨大なデータを提供してくれるシステムはこれまでにありません。
その前に何か入ると思います。XPのときは、RC1、RC2ときて、RTMでした。今のところ、これと同じスケジュールでいこうと考えています。RC 1の後のリリース(RC2と呼ぶとしても)はまだ用意していないのですが、公式にリリースするかどうかは別として、RC1のあと1カ月くらいで一部のユーザーにリリースする予定です。ただし、その頃にはもう出荷が目の前に迫っていますから、即座にフィードバックを回収して反映させる必要がありますが。
もし私がそう言ったのであれば、間違っていました。そう言ったかどうか覚えていませんが、言ったのであればそれは間違いです。XPは、確かに、512Mバイトより少ないメモリでも動きます。現時点でパフォーマンス解析をした結果、メモリ容量の少ないマシンではXPのほうがパフォーマンスがよく、メモリを増設するにしたがってVistaのほうがパフォーマンスがよくなることが分かっています。これは、メモリ管理の仕組みが改善されたからです。メモリ容量の少ないマシンでパフォーマンスが上がらないのは、単純に実行しなければならないシステム処理がXPよりも増えたからです。
はっきり言えるのは、Vistaは搭載するメモリ容量が多ければ多いほど速くなるということです。単に速くなるだけでなく、学習して徐々に速くなります。ですから、メモリをたくさん積むのは良いことです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス