2005年7月7日のロンドン爆弾事件に関する報告書で、デジタル無線ネットワークの欠如が、緊急レスキューサービスチームの活動を妨げたという見解が示された。
ロンドン議会の7月7日調査委員会による報告書は、地下の爆発現場や地上および司令室にいるレスキュー隊員らが適切なコミュニケーションを取れなかったことに言及し、18年前に発生した地下鉄キングスクロス駅の火災事故に関する公式調査で、同様の問題を解決するべく対策を整える必要性が指摘されていたにもかかわらず、緊急チームがいまだに地下で相互通信できないのは「ゆゆしき」事態だと断言した。
同報告書では、救援活動の中心となる人々が互いに通信できる技術が存在していても、関連当局がそうした技術を適切な人々に確実に配分しなければ、何の意味もないという点が強調されている。
Transport for London(TfL)は、救急サービス隊員にデジタル無線端末を持たせ、地下空間での、あるいは地下から地上への通信を可能にする「Connect」という取り組みを進めている。現在スケジュールに2年の遅れが出ているものの、ロンドンの交通システムを統括しているTfLによれば、2007年には同プロジェクトは完了する見込みだという。
デジタル無線ネットワークがなかったため、London Ambulance Serviceをはじめとする主立った救援チームの責任者らは、爆発が起こったせいで通話量が爆発的に増えていた携帯電話ネットワークを利用せざるを得なかった。
London Ambulance ServiceのオペレーションディレクターMartin Flaherty氏は、委員会に対し、「確かにわれわれは、コミュニケーション手段としての携帯電話に頼りすぎていた。こうした通信方法では、複合的かつ大規模な事件に対処することができないのは、もはや明らかだ」と語った。
当時、事件現場にいるLondon Ambulance Serviceの隊員による、救急車や救命用品および器具の追加を求めるリクエストが中央司令室に届かず、コミュニケーションが不全になり、救援活動に直接的な悪影響がおよんだ。患者を受け入れる余裕のある病院についての情報などを、隊員が受け取れないという事態も発生した。
ロンドン議会の報告書は、「ロンドンの救急サービス機関にデジタル無線機器を配備し、重大な事件現場で活動する隊員と司令室との間のコミュニケーションに、携帯電話を使わなくてよいようにすることが急務だ」と結論している。
携帯電話ネットワークにどれくらいの負荷がかかっていたのかについても、同報告書で明らかになった。例えばVodafoneでは、通話量が通常の250%へ膨れあがり、テキストメッセージの総量も2倍になったという。ネットワーク全体としては、7月7日には1100万件に達する通話がネットワーク上で処理された。これは普段の量の60%増しに相当し、しかもつながらなかった通話は含まれていない。
こうしたネットワークの過負荷が起こっていたにもかかわらず、爆発被害にあったオルドゲート駅周辺の1キロメートル四方をのぞき、緊急サービス機関は「Access Overload Control(ACCOLC)」システムを作動させなかった。ACCOLCは、携帯電話ネットワークのアクセス先を警察、消防署、救急隊に限定するシステムである。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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