「10年先を見据えた成長戦略を」--グリー田中社長が語る起業秘話 - (page 3)

人との「出会い運」を高める努力も必要

 セミナーの最後には、参加者が田中氏と小林氏に直接質問を投げかけるセッションも開かれた。積極的な参加者が多く、質問数もかなりの数にのぼった。

--田中さんが楽天を辞める際、忙しい中、どういうタイミングで表明しましたか?

田中氏 楽天では常に新しいサービスの立ち上げや、先進的な分野にかかわっていたので、そういう意味で会社にはまったく不満がなく、その点では辞めにくいと思いました。しかし、自分で会社をつくっていきたいことを伝えると、意外なほど多くの人が「それがいい」「そうすると思っていた」と言って受け入れてくれました。

小林氏 一般的に会社を辞めるのは大変です。会社にとって大事な時期に伝えて、上司が口も聞いてくれなくなったという人もいます。辞め方は重要です。起業する1年くらい前に言うのがいいでしょう。ベンチャー企業ならば「上場してから辞めてくれ」と引きとめられるかもしれません。会社の対応で自分の実力が分かります。「あと半年、1年がんばってくれ」といわれる人間になってください。

--起業時に優秀な人材が必要とのことですが、人材を揃えるには運もあるのでは?

田中氏 運の要素も過分にあります。恋愛も全人類の女性の中から序列を付けて最適な選択に基づいて知り合うなんてことはないですよね(笑)。ただ、運を高める行為は存在していて、どうやって高めていけるかに注目していくことが大切なんです。たとえば、いつの時代にも熱い人が集まる場所はあります。マニアックな場所にいる人、優秀な人、変わっているけどおもしろそうな人が、どういうことに着目しているのか。人脈を広げるには、そこに足を踏み入れていくことが大事です。

小林氏 運も実力のうちです。インターネット業界では誰と仲がいいかが重要になってきます。上司や友達など紹介する人のレベルでその人がわかります。同じ志を持った人を集めるのが重要ですね。また、自分自身が憧れられる人になることも大切です。人としての魅力をしっかり磨いて、すごいと思う人、異常に友達のいる人、頭の回転が速い人など、たくさんの人と出会ってください。

--望ましくない人材が入社してしまった場合、どう対処していくのですか?

田中氏 グリーでは今のところ望ましくない人材はいないので幸運ですが……。私は面接をする人には、もし仕事ができなくても、仕事を教えたいと思える人を採用するように言っています。少しくらい仕事ができなくても、その人を育てていきたいと思うことができれば、パフォーマンスも上がります。また、どうしてもだめな場合の話をつけるのも採用する人の仕事です。

小林氏 採用時に、その人の能力と価値観を見極めることが大事です。価値観が合わないと派閥ができてしまう。政治的なことに経営者としての力を割かれてしまいます。能力ばかりでなく、その人の価値観を重視すべきです。当社では、経営者として言いにくいことでも、投資家の立場から解雇した方がいいというアドバイスをしています

--インターンの人材はどうやってみつけて、給与はどのくらい払っていますか?

田中氏 最近は大学の掲示板に求人票を張ってもらったり、友達に紹介を頼んだりしています。でも、本質的にはインターンが自ら働きたいと集まってくる会社にしなければいけませんね。給与については、社員と変わらないくらいのパフォーマンスを期待できれば、社員並みの待遇を用意します。インターンかどうかではなく、パフォーマンスによって給与を変えています。

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