特許収入を主な収入源とするIntellectual Venturesが、著名な発明家と手を組んだといったのは嘘ではなかった。
Intellectual Venturesは現在、利益が見込める特許に化けそうなアイディアを開発している。同社は、マサチューセッツ工科大学で化学および生物医学工学教授を務めるRobert Langer氏や、Applied Mindsという南カリフォルニアの企業とも協力を進めている。Applied Mindsは、消費者向けの製品や軍事向けの機器の設計をビジネスにしている。
この1年あまりの間に、Intellectual VenturesはIT業界で物議を醸す存在として浮上してきた。同社は、特許を申請するだけでなく、倒産した企業やフリーの発明家などが取得した特許を買い上げてもいる。複数の情報筋の話によれば、同社はすでに3000件以上の特許を保有しているという。ほんの数人しか社員のいない会社としては、この特許保有数はきわめて多い。
同社の特許ポートフォリオが特許訴訟の手段として使われることを不安視するIT業界関係者も多い。
それに対して、Intellectual Venturesを創業し、現在は最高経営責任者(CEO者)を務めるNathan Myhrvold氏は、そうした可能性を否定する。結果的に訴訟が起こる可能性もあるが、同社の主な存在理由は、新しい市場を生み出せるような発明を考え出すことだと同氏は言う。
Langer教授のような人物と手を組んだことが、同氏の主張の裏付けに役立つ可能性はある。Langer教授は、マイクロスフェアの発明に手を貸した人物だ。マイクロスフェアとは、エアロゾルや薬剤に含まれるミクロン単位の高分子微粒子で、分散される可能性のある環境下で化学物質を伝播する際に使われる。また同教授は、アルコール中毒とガンを治療するテクニックも発明している。Langer教授の研究をもとに事業を立ち上げた企業の数は約15社に上るほか、150社ほどの企業が同教授の特許をもとにした製品を扱っている。同教授は科学分野で数々の賞を受賞しており、800本を超える論文を発表している。この教授が交通事故を追いかけて商売の種にする悪徳弁護士(のような人物)でないことは明らかだ。
「彼(Langer教授)はMITのどの教授よりも多くの特許を持っている。ベンチャーキャピタルの事務所に入っていって、『いくらか金が欲しい。まだアイディアはないが、とにかく金が欲しい』と言っただけで、実際に金を手に入れられる人間はほんのわずかしかいないが、彼はそんな数少ない人間のひとりだ」(Myhrvold氏)
Langer教授はあるインタビューのなかで、 Intellectual Venturesが訴訟工場であるとする説を軽く受け流した。「それが彼らの狙いだとは思わない」(Langer教授)。しかし同教授は、 Intellectual Venturesがさまざまなタイプの特許を開発しようとしていること、またそれらの特許は既存企業が最もおそれるようなものであることを間接的に示唆した。
同教授は、Intellectual Venturesが開発しようとしている特許について、「コンセプト色が濃い特許だ。かなり途方もないものといえる」と述べた。それに対して、Langer教授が独自に申請を続けているような特許は、通常は数年間にわたる実験室での研究に基づくもので、非常に具体的なアイデアを対象にしたものだとした。
Intellectual Venturesは、そのほかにセントルイスにあるワシントン大学の神経外科医Eric Leuthardt氏や、ローレンスリバモア国立研究所の物理学者Muriel Ishikawa氏などとも協力関係にある。
一方、Applied Mindsは素人発明家にとって天国のような存在だ。同社を立ち上げたのはBran Ferrin氏とDanng Hillis氏の2人。Ferrin氏はかつてDisneyで働いていたこともあるエンジニアで、Hillis氏のほうは「Thinking Machine」というスーパーコンピュータの設計者として知られている。Applied Mindsでは、製品のプロトタイプ開発をビジネスにしている。そのなかには実際に商品化されたものもあり、たとえばSonare Technologiesが販売する「Babble」という名の盗聴防止装置も、実は同社が考え出したものだ。情報筋の話によると、同社は軍事関係の仕事にも携わっているといるという。ベンチャーキャピタルのKleiner Perkins Caufield & ByersやMillennium VenturesもApplied Mindsに出資しており、またMyhrrold氏とHillis氏、Ferrin氏は長年の友人でもある。
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