Microsoftの幹部は、引退後もゴルフで時間をつぶすようなことはない。Nathan Myhrvoldも、そうしたOBのひとりだ。
Myhrvoldは、5年前にMicrosoftのCTO(最高技術責任者)を退いた。その後は長年の趣味だった古生物学に取り組み、恐竜の発掘作業のスポンサーにもなった。しかし最近は、先史時代の骨を探すことより、もっと興味をそそられるものを見つけたようだ。彼は、一部で物議をかもしている謎めいた新興企業、Intellectual Venturesの創設者でもある。
Intellectual Venturesは、ベンチャーキャピタル、シンクタンク、そして知的財産権企業を足して割ったような企業だ。同社は、著名な発明家を集めて「発明セッション」を催し、これらの集まりから、いつの日か莫大な富をもたらす特許が生まれることを期待している。同社にはMicrosoft、Google、Intelといった大企業が出資しているといわれている。才能豊かな人々が創造に専念することのできる場--MyhrvoldはIntellectual Venturesをそう表現する。
しかし、同社をもっと冷めた目で見ている人々もいる。これらの人々は同社の活動が特許訴訟をあおり、逆説的に革新を滞らせることになると主張する。賛否両論はあるにせよ、Intellectual Venturesは現在進行中の特許論争の中心的存在となるだろう。MyhrvoldはCNET News.comのインタビューに応じ、発明が減っていること、同社のビジネス、そして知的財産の話題になると人々が不機嫌になる理由について語った。
--あなたは以前に、研究と発明の違いを論じたことがありますね。改めて、持論を聞かせていただけますか。
企業で働く技術者の大半は、新しい発明ではなく、製品開発の対価として報酬を得ています。もちろん、彼らも新しいものを生み出していますが、「発明家」の肩書きを持つ者、発明を主たる業務としている者の割合はわずかです。新製品に利用できるかどうかを気にすることなく、社員が新技術の開発に専念できるような企業はほとんどありません。
--この20年間に登場した技術のうち、既存の製品から派生したものではなく、純粋に発明と呼ぶに値するものはどれでしょうか。
GUI(graphical user interface)はすばらしい発明でした。マイクロプロセッサもそうです。どの技術製品にも発明の成果はふんだんに盛り込まれています。しかし現在では、発明が生まれる頻度は減り、数少ない例外も、さまざまな制約に縛られるようになりました。これは企業が、次期製品の開発に利用できる研究だけを進めているからです。大学教授も、研究室の学生の学位論文や自分が終身在職権を得るために使えそうな研究にしか取り組んでいません。
--なぜこのような状況になったのでしょうか。
発明はリスクが高く、投資家に敬遠されるからです。往々にして、ブレークスルーは当初の予想とはまったく関係のない分野で起こります。Xerox PARCの研究者は数々のブレークスルーを成し遂げました。この中にはGUIやネットワークなど、今日のPCの基盤となっているものも多々あります。しかし、これらの発明はPARCのスポンサーであるコピー機メーカーのビジネスとは、ほとんど関係のないものでした。
Microsoft時代には、私もMicrosoft Researchを設立するために、このような認識と戦わなければなりませんでした。研究に投資するのはばかげている、というのが定説だったからです。「Xerox、Bell Labs、IBM Researchを見るがいい。SQLを発明したのは彼らだが、そこから利益を得ているのはLarry Ellisonではないか」というわけです!
--発明家というのは、19世紀の職業という気がしますが。
その通り!19世紀は発明の世紀であり、風変わりな人々が、重要な発明を次々と生み出していました。発明家は職業として認知され、それをおかしいと思う人もいませんでした。しかし現代のわれわれが、カクテルパーティで発明家ですと自己紹介をしたら、奇異な目で見られることでしょう。ほとんどの人にとって、発明家は映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する、あのきてれつな博士なのです。
--Intellectual Venturesを立ち上げた経緯を教えてください。
「発明に敬意を払い、発明に投資することを唯一の目的とする会社」をつくるためです。われわれが具体的な製品を作ることはありません。物作りを否定しているわけではない--物作りはすばらしいことです。しかし、製品や製品志向のアイデア/企業を支援するインフラは、すでに十二分に存在します。
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