知的財産権を専門に扱う新興企業のIntellectual Venturesは、同社が新技術の発明に専念すると宣言していた。
しかし一方で、同社は膨大な数の特許を買い集めている。
Intellectual Venturesは、Microsoftの元CTOであるNathan Myhrvoldと同僚の科学者Edward Jungが設立した会社だが、同社に詳しい情報筋によると、ここ数年間に数千件もの特許を取得しているという。さらに、同社の取得した特許の数は3000〜5000件に上るという別の情報筋の話も複数ある。
これらの特許の多くは、Ramtron Internationalなど、現在も事業を行なっている企業から購入したもので、残りは失効した特許を保有する発明家やGeneral Magicなどの廃業した企業から取得したものだ。Intellectual Venturesはこれまで、公然と特許権の買い漁りを進めてきたが、同社が保有する特許ポートフォリオの規模は明らかにされていなかった。一部ではこれまで、同社の保有する特許の数は数百件程度と予測されていた。
従業員数が50人ほどの企業が、数千件の特許ポートフォリオを抱えるというのは、いささか異例とも言える。米特許商標庁(US Patent and Trademark Office:USPTO)が2004年にひとつの企業に与えた特許の件数は、IBMの3248件が最多で、第2位は松下電器の1934件、第3位はキヤノンの1805件だった。
また、Intellectual Venturesの特許ポートフォリオは、サードパーティが保有する特許権の買収を専門とする他の知的財産権企業と比較しても、かなり大規模なものと思われる。たとえば、Acacia Researchがこれまでに取得した特許の総数はおよそ120件である。
Intellectual Venturesの特許ポートフォリオの急増により、今後ハイテク業界では、同社の事業計画に関する様々な憶測が飛び交いそうだ。一部のIT企業幹部は、Intellectual Venturesから特許権使用料(ロイヤリティ)を要求されるのではないかとの懸念を密かに抱いていた。企業がロイヤリティを自発的に支払うことなどまずありえないため、仮にIntellectual Venturesが各社に対してロイヤリティの支払いを強要すれば、訴訟の嵐が吹き荒れる可能性もある。
特許権を取得したとしても、ロイヤリティを得たり、特許権の利用者にロイヤリティの支払いを命じる判決を勝ち取れるケースはほとんどないが、ごく稀に大きな利益をもたらすダイヤの原石のような特許があるのも事実だ。Forgent Networksは、いわゆるJPEG特許で、およそ1億ドルのロイヤリティ収入を得ている。Forgentによると、現在係争中の訴訟もあるため、この特許によって同社が得るロイヤリティの総額は10億ドルに上る可能性があるという。
しかしIntellectual Venturesは、ハイテク業界で懸念されているようなロイヤリティの請求を行なう計画は全くなく、現在は将来有望なアイデアの模索/促進を中心に事業を展開している、と同社のマネジングディレクター、Peter Detkinは断言している。
「われわれ自身が発明を行なうと同時に、発明に投資するというのがわれわれの方針だ」とDetkinは述べ、さらに「世間には、発明に必要な時間やリソース、専門知識を持たない規模の小さな発明家が多数存在する」とした。
さらに同氏は、特許にはさまざまな使途があると付け加えた。
特許権の具体的な使途について、同氏は「例えば、スピンオフ(会社の一部門を独立させること)やライセンス供与、さらに業界内の他の企業/組織との連携も可能だ」と述べ、さらに「現在われわれは、小規模の発明家と大企業の両者と連携している」と付け加えた。
確かに知財ビジネスでは常に訴訟が起きる可能性があるが、Detkinによると、Intellectual Venturesには、特許ポートフォリオを訴訟の原動力として使用する意図はないという。
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