Walt Disneyは先頃、テレビ番組を無償でダウンロードできるようにするという大胆な計画を発表したが、この動きがケーブル会社や衛星放送プロバイダーにとって厄介な問題を突きつける可能性がある。また、巨額の資金を投じて有料テレビ事業に乗り出そうとしている電話会社の戦略にも疑問の声が挙がっている。
Disney傘下のABCは米国時間4月10日、人気ドラマ「Lost」「Desperate Housewives」「Alias」「Commander-in-Chief」のエピソードを、5月から2カ月間試験的にインターネットで無償配信するとの計画を発表した。ネットで見られるエピソードは、放送日の翌日に公開され、放送を見逃した視聴者がいつでも見られるようアーカイブされることになっている。
ユーザーはこれらの番組をABCのウェブサイトで観ることになる。同サイトではエピソードの早送りや一時停止や、全体の巻き戻しが可能になる予定だ。番組には短いコマーシャルが入り、その部分に関しては早送りができなくなる。
ABCは、インターネット経由でコンテンツを配信する新しい方法で最先端の実験を行ってきた。同社は昨年、Apple ComputerのiTunes Music Storeで、人気の高い番組のエピソードを1話1ドル99セントで販売し始めた。競合するNBCとCBSもすぐにこの動きに追随し、iTunesで自社の番組提供を開始した。
iTunesでの番組提供が、有料コンテンツのダウンロード配信の領域で、さらに大きな何かが起こることを告げていたのかもしれないが、Disneyによるインターネット経由の無料番組提供の動きが、ケーブル事業者のビジネスモデルを直接脅かすものと見なされる可能性がある。米国では過去何十年も、ケーブル会社が家庭へのテレビ番組配信をコントロールしてきた。また、このニュースは電話会社--特にテレビ事業への参入を積極的に進めるVerizon Communicationsにとって不吉なものである。
Verizonは2年前から巨額の資金を投じて、各家庭に直接つながる光ファイバー網の構築を進めてきた。この回線を使えば、いわゆる「トリプルプレイ」--超高速ブロードバンド、電話、テレビの各サービスをまとめて提供することが可能になる。同社は、電話サービスを提供し始めたケーブル会社と競合するための最良の方法は、同じ土俵に登って勝負に勝つことだと考え、大きな賭けに出たといえる。しかし、動画配信用に電話網をアップグレードしたり、新たに構築したりするという戦略には、大資本が必要とされ、複数のリスクも伴う。
JupiterResearchアナリストのJoe Laszlo氏は、Disneyの計画について、「電話会社の長期戦略に対して大きな問題を提起するものだ。高速ネットワークの構築は、コンテンツ配信がどのように進化するにしても、それ相応に懸命な措置だ。しかし、5〜10年後にビデオの視聴方法がインターネット中心になってくれば、電話会社はビデオサービスの価値を維持するために、ほかの方法を探さなくてはならなくなる」と語っている。
インターネットテレビが一夜にして従来のテレビの地位を奪うとは誰も思っていない。ストリーミング技術の進歩にもかかわらず、ウェブ経由で配信されるビデオは依然として不安定で、データパケットのバッファや画面のリロードが原因で中断されることも頻繁にある。事実、3月にCBSがNCAAのバスケットボールトーナメントをインターネットで中継したが、これを観た多くの視聴者からはネットワークの過負荷についての苦情が寄せられていた。
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