しかし、だからといって宇宙計画そのものから撤退するわけではない。NASAはより高い目標を設定したのだ。スペースシャトルは、新しいCEVへと引き継がれ、月へ到達し、最終的には火星にも着陸できるように設計される。
CEVはかつての「Apollo」宇宙船のような形状になる予定だが、大きさは3倍になる。2014年の打ち上げを予定しており、3月に初めて風洞実験を実施したばかりだ。
目標は2018年までに4人の乗員を月に到達させることだ。4人は、最長で6カ月間は滞在でき、地球以外の土地の上でのどうやって生きていくかを学べるような前哨基地を建設することになる。月用の温室を建てて野菜を育て、月の土壌をテストし、そこから酸素を得る実験をする予定だ。
あと12年で人間が月に降り立つためには、NASAはこれから大量の計算とデータ分析を実施していかなければならない。こうしたタスクを十分こなせると考えられているスーパーコンピュータが、エイムス研究センターにある。
ダイオードがちかちか輝く黒い冷蔵庫のような箱がずらりと並び、バスケットボールコートが3面はとれそうな広さの部屋を埋める。ここには1万240基ものプロセッサが収められている。「コンピュータは、設計にかかる時間を短縮し、必要な実験の数を減らすためになくてはならない存在になる」と、スーパーコンピューティング部門のアプリケーションブランチチーフであるDochan Kwak氏は語っている。
スーパーコンピュータがCEVに関する演算を処理している間、冷却システムからはごう音が絶えることがない。全プロセッサの演算能力は61.4テラフロップス(1テラフロップは毎秒1兆回の浮動小数点演算)に及ぶ。
しかし計算だけでは十分ではない。月へ到達するためには、スペースシャトルが耐えてきたよりもはるかに高速で高温の状況に耐えなければならない。CEVの外面を守る耐久性の高い新たな素材が必要だ。
素材のサンプルの耐久実験には、超音速で高温ガスを噴射する巨大な溶鉱炉ともいうべきアークジェットが使用されている。これによって、大気圏突破と再突入時における熱と圧力が再現される。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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