Googleは先ごろ、いわゆるクリック詐欺を巡って訴えられていた集団代表訴訟で和解案を示し、9000万ドル相当の補償を行う用意があることを明らかにした。これにより、同社がこの訴訟に決着をつけられるめどがたった。
Googleにとってはそれで良いかもしれないが、だからといってネット広告をクリックしたように見せかけて広告主に対価を支払わせるというこの問題がすぐになくなるわけではない。現在は、不正クリックを判断する明確な基準も、監視を行う何らかの第三者機関もない。このような状況では、問題が実際に発生したと感じたときに裁判に訴えるしかほかに対策がない、と一部の広告主は考えている。
確かに、2大クリック課金広告ネットワークを展開するGoogleとYahooは、この問題への対処を進めていると明言している。しかし、クリックの実態を監査する企業のなかには、インターネット広告のクリックのうち、20〜35%がクリック詐欺によるものだとするところもある。
Search Engine Watch編集者のDanny Sullivan氏は先週、「今後、立証はますます難しくなっていくだろう。今回の訴訟が和解されても、6カ月後にはまた、Googleが広告の不正クリックに対して課金し続けているように感じたところが、新たな訴訟を起こしてくるだろう」と述べていた。
残念ながら、これは簡単に解決できる問題ではない。一部の専門家によると、解決には検索エンジン各社と広告主からデータを取得して、中立的な環境でクリックの真偽を判断する独立監査機関の設置が必要だという。
だが、GoogleとYahooは、このアイデアを採用することに消極的な姿勢を見せている。収益の99%を検索結果やパートナーサイトの広告から得ているGoogleは、競合他社のビジネス拡大につながるデータは渡したくないと考えている。GoogleのShuman Ghosemajumder氏(信頼および安全確保担当ビジネス製品マネージャー)は、「不正クリックを正確に把握できれば、それが競争上のアドバンテージとなり、差別化要因になる。そのため、われわれはYahooなどの各社と競争しながら、可能な限り最高の検知結果を提供しようとしている」と述べている。
Yahooの関係者は、「検索広告業界の込み入った事情を本当に理解してもらえる第三者機関には協力する準備があるが、クリック詐欺計測のための基準を確立する方が今の業界にとっては重要だと感じている」と、電子メールによるコメントのなかで述べている。
YahooやGoogleは、ネット広告の主力ネットワークであることから、この問題に対する両社の意見は非常に重要だ。マーケティング担当者は、GoogleのAdWordsやYahooのSearch Marketingプログラムを通じて検索結果のページに表示されるキーワードに対して入札を行う。また、Google AdSenseやYahoo Publisher Networkを利用すれば、広告主は内容に関連性のあるコンテンツを発信するウェブに自社の広告を掲載することができる。GoogleはAmerica Onlineの広告ネットワークへ広告を提供している。また、YahooはMSNの検索広告を担当しているが、MSNは他の情報発信サイトと協力し、独自のコンテンツ連動型広告ネットワークを立ち上げようとしている。
クリック詐欺は、いくつかの状況で発生する可能性がある。なかには、競合他社のネット広告予算を消耗させるため、ある会社がライバル企業の広告をクリックすることもある。しかし通常は、売上向上を目指してウェブサイトのオーナーが自社サイトの広告をクリックするのが原因とされている。クリック詐欺の手法には、人を雇って広告を何時間もクリックさせるいわゆる「クリックファーム」、広告を自動的にクリックするために書かれたプログラムを使う「クリックボット」、あるいはこの目的のために多数のマシンを乗っ取る「ボットネット」を利用したものなどがある。
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