MLBほどネットビデオの画質改善に大きな興味を持つ企業はほかにない。MLBは、ネット経由のライブ中継に関して、これまでトレンドセッターの役割を果たしてきた。MLBは今年NCAAバスケットボールトーナメントのライブ中継を担当したが、26万8000人以上の視聴者に同時にビデオを配信したその技術力には批評家から称賛が寄せられた。
MLB.comのチーフアーキテクトJustin Shaffer氏は、ネット経由でのHDビデオ配信が実現的になる時期について、多くの業界関係者よりも楽観的に捉えている。
「その実現に向けて、すでに物事が動き始めている。帯域幅のアップグレードが必要なのは明らかだが、それが奨励される理由が確かにある」(Shaffer氏)
Shaffer氏によると、いくつかの企業では、近くにあるコンピュータ同士でデータの共有が可能になるような技術の開発に取り組んでいるという。このような技術を利用すれば、同じビデオを複数の人々に流す代わりに、ハブとなるコンピュータに情報を一度送るだけで、あとはそれを他のコンピュータに配信することが可能になる。
CinemaNowやMovielinkは、最近映画のダウンロード配信サービスを提供する計画を明らかにしたが、両社のようなサイトではHDビデオの帯域幅に関わる問題は発生しない。また、New York Timesが先に報じたところでは、Apple ComputerやAmazon.comもネット経由の映画配信について可能性を模索しているという。
Akimbo Systemsでもウェブ経由でビデオコンテンツを配信しているが、同社がダウンロード配信するのはライブで観なくてもいいようなコンテンツだ。ユーザーはコンピューターを立ち上げておくだけで、ウェブのトラフィックが混雑していても、Akimboからのフィードを受け取ることが可能だ。そして、ダウンロードが完了した映画やテレビ番組は、データがユーザーのハードディスク内に存在するため快適に観ることができる。
「HDビデオを配信するには、ストリーミング配信のモデルを避ける必要がある」とAkimbo SystemsのCEO、Josh Goldman氏は述べている。「ダウンロード形式で配信するのが一番だ」(Goldman氏)
しかし、ダウンロード配信にしたとしても、サイズの大きさの問題は残る。たとえばAppleのQuickTimeページにある映画「Walk the Line」の予告編の場合、標準版のファイルサイズは36Mバイトであるのに対して、HD版のほうは93Mバイトとなっている。このHD版は標準版に比べて2倍以上の情報が詰め込まれている。
ところで、生まれて間もないインターネットのビデオ市場は、画質の低さに成長を阻まれるのだろうか。
「HDの人気が高まっても、YouTubeには大した影響はないだろう」と同社の広報担当、Julie Supan氏は言う。「われわれのサービスでは、時間が短く、素速く配信できる、低画質のビデオコンテンツで、これらはさまざまな機器からアップロードされるものに重点を置いている。われわれのサービスでは、コンテンツの『解像度』ではなく、それが楽しめるものかどうかのほうが重要だ」(Supan氏)
IDCのアナリスト、Josh Martin氏もSupan氏と同意見だ。同氏によると、iFilmやAtom Entertainment、YouTubeのようなサイトがユーザーを惹きつけているのは、ほかでは観られないエンターテインメントが提供されているからだという。Martin氏は、最近インターネット上を飛び交っていたあるビデオクリップを例に挙げたが、このビデオにはある自閉症の高校生がバスケットボールの試合に登場し、6本のスリーポイントシュートを決めたところが収められており、おかげでこの高校生は全米で一躍有名になったという。
「この話は、HD映像でなければ、もっとつまらなくなるだろうか。私はそうは思わない」(Martin氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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