デジタル家電への進出を狙うアーム

文:Tom Krazit(CNET News.com)
翻訳校正:田村洋一、小林理子
2006年04月04日 19時22分

 IT業界で最も大きなシェアを有する企業といえば、どこを思い浮かべるだろう? Microsoftか、Googleか、それともIntelか? では、従業員数1300名という英国の企業、ARM(本社:ケンブリッジ)はどうだろう?

 ARMによる半導体チップのデザイン(プロセッサIPコア)は、事実上、地球上の全ての携帯電話機の中枢に搭載されている。実に携帯電話機の98%が、マザーボード上に少なくとも1個のARMコアを搭載している。これは市場調査会社Linley Groupの調査レポートによる数字だ。

 これほど市場を席巻してしまうと、ARMは奇妙な立場に置かれることになった。巨大な市場シェアを達成した現在、ARMに残された道は2つしかない。シェアを下げるか、別の市場に進出するかだ。そこでARMは携帯電話機以外のデジタル家電製品についても、チップ設計の中心であろうと一段と力を入れ始めた。対象となる分野は、セットトップボックス(STB)、デジタルカメラ、プリンター、デジタルテレビなどだ。

 もちろん、ARMはここ何年か家電エレクトロニクスメーカーにも製品を供給しており、携帯電話機以外の分野の売上はすでにARM全体の3分の1以上を占めている。しかし、ARMの最高経営責任者(CEO)であるWarren East氏にとって、この数字は満足するにはほど遠いものだ。East氏は具体的な時期は明言しないが、いずれ家電分野での売上を全体の半分にまで伸ばしたいようだ。

 CNET News.comとのインタビューでEast氏は、「携帯電話機は健全なペースで成長していると思うが、以前から言い続けているように、当社の使命はデジタル・ワールドのアーキテクチャを提供することであり、携帯電話機だけに留まるものではない」と語った。

 これを実現させるためには、大きな難問を解決する必要がある。どのプロセッサのアーキテクチャにも共通することだが、プロセッサにはそれに対応して書かれた固有のソフトウェアが必要で、ARMコアもその例外ではない。すでにARMと競合するアーキテクチャに対応するソフトウェアを開発してしまった企業にとっては、よほど明快な理由がない限り、プロセッサをARMに切り替えようとはしないはずだ。

 新興企業の立場に立つという選択は、ARMにとっては経営戦略の切替だ。ARMの主な事業は、アプリケーションの実行用にエレクトロニクス機器に搭載するプロセッサコアを設計することだ。ARMは各社に個別のコアをライセンス供与し、各社はこのコアを組み込んで独自のチップを開発する。また、ARMはTexas InstrumentsやIntelのような大手企業にもアーキテクチャのライセンスを販売し、供与先の何世代もの製品にこのアーキテクチャが利用される。

 Linley Groupの首席アナリストであるLinley Gwennap氏によれば、1台当たり2個から3個のARMベースのチップを搭載した携帯電話機もあるという。East氏はこれを「匿名の普遍性」と呼ぶ。ARMは2005年に4億1800万ドルの売上を記録した。このうち9000万ドルは、ARMが2004年に買収した半導体設計企業、Artisanの売上だ。この9000万ドルを差し引いても、ARMのプロセッサ部門は19%という成長率を達成している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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