IBM Researchは既存のチップ製造機器を利用して、今日のチップと比べると格段に細かい、29.9ナノメートル間隔でシリコンに線を描くための方法を考案した。この開発により、将来的にチップを製造するコストの削減が図れる可能性がでてきた。
この画期的発明は、液浸リソグラフィー(immersion lithography)を拡張した実験版の技術から誕生した。液浸リソグラフィーでは、シリコンウエハーを純水に浸す。レーザー光線を複雑なマスクを通して照射し、ウエハー上に微細な影のパターンを投影する。さらにこのパターンは、ちょうどネガフィルムが写真として印画されるのと同じような化学的プロセスを経て、永久固定される。パターンが複雑なほど、回路が細かくなる。
ウエハーを水に浸すのは、空気よりも水のほうが光の屈折率が高いためである。それにより解像度が高まり、パターンが細かくなる。液浸リソグラフィーは比較的近い将来に商用ベースでの利用が開始される予定である。
IBMのシステムでは、まずレーザー光線が2つの光束に分割される。この2つの光束はさらに「Nemo」と呼ばれるツールにより、明暗が交錯したパターンとして組み合わされる。この方法では、標準的な液浸リソグラフィーと比べ、より細かい間隔で刻み込まれたパターンを実現することができる。
「日常的に30ナノメートル以下の間隔での描画が可能となる」とIBM ResearchのAlmaden Research Centerでリソグラフィー素材マネージャーを務めるRobert Allen氏は述べている。
Nemoシステムが最終的に商用化されれば、チップ業界は新たな手法により、現在使用されている193ナノメートルリソグラフィーシステムの寿命をさらに延ばすことができる。このようなシステムは、1基あたりの値段が1500万ドルし、長年にわたり使われている。その名前は、レーザー光線の波長が193ナノメートル(1ナノメートルは、1mの10億分の1)であることに由来している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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